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[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第5章 何が為に








その放課後だ。
アイツらにはそう言ったものの、俺はその娼館がどうしても気になって、遊郭に立ち寄る。
門前にいる隻腕の引き手は俺を見ても止めることなくただぶつぶつと空を眺めている。
その側にはモルヒネの瓶が転がっていて、その不気味さに吐き気がした。

木の燃えた臭いが染み付く遊郭の通り。
人だかりのできたその場には黒い煤けた巨大な建築物が静かに佇む。
「まだ見つかってない死体もあんだってよ」
今にも倒壊しそうな家屋の隙間からは、大工たちが焦げた柱を持ち上げる姿が見える。
するとその一人が何かを見つけたようで、大きな声をあげた。
「おうい、いたぞー!」
「いたかー!」
担架を持った男たちが、足場の悪い現場を軽快に跳ねる。
「あいやー、こりゃわりいなあ」
「二人いっぺんに乗せれんかい?離してやるのはなんだかなあ」
「どうだべ、いかんせん担架が小せえからなあ」
まあ、やるだけやってみっぺと男たちが焦げた人のようなものを持ち上げた。
腐ったような、酷い臭いが辺りに満ちる。
「っ!」
それに思わず鼻をつまむが、その死体思わず目を奪われた。
抱き合う二人の 焼死体。
「おー、いけるもんだな。あ?この仏さんなんか持ってらあ」
「仏さんの持ちもんけ?んじゃそっと運んでやれよお」
担架がこちらへと向かってくる。
それに慌てて道を開けようとすると、野次馬の一人とぶつかった。
「ってえな」
「わりっ」
「おーのけのけ!じゃまじゃいじゃまじゃい!ほれほれツンツンのにいちゃんあっちやけあっちゃけ」
なんとなくあっちへ行けと言われているのがわかる。
なんとか人一人分の道が通れるくらいの通路を作ると、大工たちはせっせと俺の横を通り過ぎた。
その背を見送ると、通行人の一人が声をあげた。
「あっ鞠」
コロコロと転がり、俺の長靴にコツンと当たる。
煤けた赤のその鞠を俺は拾い上げると、仕方ねえから届けてやるかと
鞠へと視線を向けて、目を見開いた。


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