第4章 感謝を
その姿は酷く、苦しそうに見えました。
「………やっぱり炎司様は、身勝手です」
勝手に思い込んで、勝手に苦しんで。
そして勝手に、嫌われていると思い込んでいる。
「炎司様、炎司様が如何程に奥様とお子様を想っているのかは重々承知しております。しかし、それを態度にあらわしていないのではないのでしょうか」
炎司様は、その翡翠の瞳を大きく見開きます。
「私には奥様のお気持ちが分かるわけではありません。これはあくまでも憶測です。
奥様、奥様は寂しいのではありませんか?
如何に愛を持てど、それは口にしなければ伝わりません。態度に示さなければ、それは無関心と同義なのです」
「それは、俺が冷を真に愛していなかったと言いたいのか」
「いいえ、そういうわけではありません」
ぴしゃりとそう、言い放ちます。
「炎司様、どんなに高価な物を送られても、どんなに美しい物を贈られても心が満たされないのを私は知っています。冷様も、きっと炎司様に心から愛してもらっているという確証が欲しいだけなのです」
その顔が、なんとも言い難い様子で。
「間違いがあったとすれば、きっと身請けの時。嫉妬に狂う男共の姿を私は知っています。炎司様、一言冷様に、相談すべきだったのです。
"お前を身請けしたい"と一言言うべきだったのです」
「それは」
「ええ、過ぎたことは仕方ない。後悔しても始まりません。炎司様、炎司様は冷様に想いをぶつけるだけでいいのです、それだけできっと 冷様は救われます」
禿上がりが 生意気とも思います。
私は未だ 愛も恋も知りません。
それでも
「安心してください炎司様、きっと冷様は 炎司様を愛しておられます。そうでなければ 四人も子を産むことなど、この屋敷に留まることなど、しない筈ですから」