• テキストサイズ

[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第3章 邂逅











思えば、それが 私の轟家での立場の転機だったのかもしれません。









「あ、すずめ!今日坊ちゃんの夜の膳、あんた運んでくれない?」
「え」
ある日のことです。炊事場で桶の汚れた水を捨てるからと外に出ようとすると、膳を持った先輩がそう言いました。
「いいですけど、どうしました?おトキさん体調でも…」
「違うのよ!坊ちゃんからの指名!ご・し・め・いよぉ!」
「坊ちゃんからの?」
その言葉に、思わず目を丸くします。
きっと先日の邂逅で、嫌われたものかと思っていたのです。
「まあ指名ってよりも、みんなが膳を持ってくと"すずめか?"って聞かれるもんだからさ。あんた凄いね!焦凍坊ちゃんに名前を覚えてもらえるなんて!」
この勢いで世話係になっちゃいなよと茶化す先輩使用人に苦笑いして、桶を下ろします。
「桶の水はやっとくから!膳は部屋の前に置いておくだけだから、お願いね!」
「かしこまりました」
膳を受け取ると、ずっしりとした重さのそれに少し驚きます。
まあ、彼と私の年齢は同じだと聞きます。きっと成長期の食べ盛りなのでしょうと慎重に私は部屋へと向かいました。







坊ちゃんの部屋の前に着くと、私は少し戸惑います。
膳を置いたことを、声をかけるべきか。それともこのまま何も言わず去るべきかと悩みますが、冷たいご飯を食べさせるよりはいいと私は声をあげました。
「坊ちゃん、お食事の方お持ちいたしました」
しかし、返事はありません。
眠っているのかもしれないとそっと立ち上がろうとすると、突如室内から声が聞こえました。
「入れ」
「え、は、はい!」
座り直し、襖を少しだけ開きます。
ゆっくりと、自身の体が入れる程襖を開けると、私は室内にいる坊ちゃんと目が合い、息をのみました。
「っつれい、します」
声が詰まります。
しかしなんとか礼儀として、声をかけると 坊ちゃんはかしこまらなくてもいいと私から視線を逸らしました。
「は、はい。失礼します」
膳を部屋に入れ、体を室内に入れます。
すると坊ちゃんは、私が頭を下げるよりも早く口を開きました。
「悪かった」
その言葉に、呆然とします。
「え?」
「その……こないだ、少し子供っぽいことをしたから」
「え、謝る為だけに来る人来る人私か確認してたんですか?」
すると坊ちゃんは、その切れ長の目を見開いて
/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp