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[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第3章 邂逅









今日も私は あの人を紅い鞠をついて待ちます
この鞠が百つければ あの人は今日来るでしょう
鞠が百つくと
紅い鞠が手から落ちて
地面を転がってあの人の草履に当たりました
あの人は手毬を拾って
私に笑いかけるのです






ゆっくりと、惜しむように唄います。
姐様が よく、唄ってくれた 唄。
唄い終わると、襖がすうと静かに開き、その人物は私を静かに見下ろしました。
一拍。
黒と翡翠の瞳に、色の違う、白みがかった銀髪と赤みがかった茶髪。
端正な顔立ちは、恐らく奥様に似たのでしょう。
その不思議な美しさに呆然とするも、ふと我に返り、私は思ったことを口にしました。
「約束、守ってくれるんですね」
そういうと、坊ちゃんは約束だからとぶっきらぼうに言います。
ああ、この人、性格は炎司様似なのか。
顔は奥様によく似ているというのに。
「私、一月程前からこの家で使用人させてもらってます、すずめです」
改めて自己紹介し、深々と頭を下げます。
すると坊ちゃんも 何を思ったか自分の名を口にしました。
「轟焦凍だ」
「は、はあ、お話に伺っています」
それもう、私が遊廓にいた頃から耳にタコが出来そうなほどに。
すると坊ちゃんは、何を思ったのかその端整な顔に深いシワを寄せると、憎々しげに言葉を吐きました。
「親父にか」
「え、ええ」
「あいつの言葉は真に受けんな」
ぴしゃりと襖が閉められます。
私は、何かまずいことでも言ったのでしょうな。
それとも炎司様に褒められていることが恥ずかしい、照れ隠し?
しかしそんな風には見えません。
私は少し考えてみるものの、原因がわからずに首を振りました。
触らぬ神に祟りなし。
私はこの家の、一使用人です。
そこまで詮索する必要はありません。
そこで私は考えるのをやめ
側の落ち葉を集め始めました。
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