• テキストサイズ

[R-18]娼婦の唄【轟 焦凍】【爆豪 勝己】

第3章 邂逅








「冷様や夏雄様、冬美様にはそれぞれ世話係がついているの。焦凍様には世話係がついていないから、使用人達が交代で焦凍坊ちゃんの部屋の前まで膳を運ぶのよ」
「中には入れなくていいんですか?」
「ええ、焦凍坊ちゃんはあまり人とお会いになりたがらないから。ここが焦凍坊ちゃんのお部屋。持ってきたら声をかけて、私たちは別の仕事に取り掛かるわ。そして暫くしたら下げに来るの。食べ終わってたら坊ちゃんは廊下に膳を出しといてくれるから……って言っても、すずめはまだ新人だから少し先のことだけど」

遊郭の大火事から一月ほど。
私の身は、炎司様に買われました。
一体いくらかかったのかは、炎司様は教えてくれることはありません。
ただ、家の使用人が足りないからと、ぶっきらぼうにあの人は私を迎えてくれたのです。





















それからさらに 日が経ち





「〜〜♪〜♪」

慣れてきた私は他の使用人から独り立ちしました。
箒を片手に、鼻歌交じりに庭の落ち葉を履きます。
冬の冷たさの混じる秋の風に、掃いたばかりの落ち葉が舞うと私はふうと溜息を吐いて腰に手を当てました。
せっかく掃いたのに、と舞った落ち葉へと向かい、再び箒をおろします。
すると、うしろから声が聞こえ
「おい」
私は振り向きました。
しかし、そこには誰もいません。
「?」
「歌わねえのか」
どうにも声は、屋敷の中、それも庭の前の焦凍坊ちゃんの部屋から聞こえるようで、私は返事をしました。
「は、はい。落ち葉が舞ってしまいましたんで」
「落ち葉?」
「庭の掃除をしていたんですが、集めた落ち葉が悪戯風に乗って踊ったんです。私はそれを集めに行かなきゃいけないので」
「そうか」
おそらく、中にいるのは坊ちゃんでしょう。
納得してもらえたかと思うと、私は部屋の前を離れようとしました。
「歌が」
「?」
「歌が聴きたい」
「え」
想定外の言葉でした。
歌が 聴きたい。
しかし、私はそれにより、あることを一つ思いつきました。
「唄ったら、部屋を出てきますか?」
「それは」
「出てこないなら、歌いません」
すると、坊ちゃんは少し何かを考えたように
少しだけ間が空くと、わかったと渋々といった様子で返事した。
むしろ、「それなら歌わなくていい」と言われる物だと思っていたので、私は驚いたのです。
/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp