第2章 バレンタイン小説(跡部・彼女目線)
跡部君に近づきたい一心で細かい所まで考えて無かった。だけど、なったからにはやり遂げなきゃ跡部君に迷惑をかけちゃう。
行事がある度に資料と電卓をにらめっこしながら朝早くから夜遅くまで、授業中以外は生徒会室にいる毎日。日課にしていたテニス部通いもその間は出来ていない。
氷帝学園最大の行事にして生徒会最後の仕事である文化祭が終わり、私はいつものように電卓片手に資料とにらめっこ。学園最大の行事なだけに資料の数も半端な数ではない。
「流石にこの量はキツイな。期日に間に合うかな…」莫大な資料の数に思わず弱音がこぼれる。
「弱音なんて、らしくねぇーじゃねーの」誰もいないはずの生徒会室に、いるはずのない人の声が響く。
「跡部君…どうしてここに…部活はどうしたの?」私は声がした方に顔を向ける。
「部活はとっくにおわったよ。外を見てみな、もう真っ暗だぜ」跡部君が窓を指さす。
「えっ!嘘っ!」私は窓の外を見て驚いた。いつの間にか日が沈み真っ暗になっていた。
「毎日、毎日こんな時間まで1人で残るなら誰かに手伝ってもらえばいいだろ?苦手なんだろ?数学」跡部君は優しい眼差しで私を見る。
「跡部君は何でもお見通しなんだね。テニス以外でもインサイト使えるんだ。これは私の仕事だから。人より時間かかっちゃうのは自分の責任だし。期日に間に合わなかったら跡部君に迷惑をかけちゃうから頑張って仕上げるね」資料に目を落とし電卓を叩こうとした時、跡部君に資料を取り上げられた。
「文化祭を企画運営したのは生徒会だ。だから香住だけの仕事じゃねぇ!間に合わねぇなら何で俺を頼って来ねぇんだよ。1人で何でも抱え込むなよ。今日はもう遅いから帰るぞ!」そう言って跡部君に無理矢理生徒会室から追い出され、しかも夜遅いからと跡部君を迎えに来た車で家まで送ってもらった。
『跡部君は会長としての責任でやったんだよね。あんな風に言われて優しくされたら雌猫さんじゃなくても勘違いしちゃうよ…』
次の日から跡部君は部活の合間を縫って生徒会室に来て、収支報告書作成を手伝ってくれた。そのお陰で無事に期日内に報告書を提出することができた。