第1章 バレンタイン小説(手塚・彼女目線)
「今、ようやく気がついた。香住をずっと見ていた気持ちは恋だったのだと。俺と付き合ってくれないだろうか?」手塚君は私から少離れて私を見つめている。私から告白するつもりでチョコを作ったのに手塚君から告白されるなんて思ってなかった。手塚君は私なんて眼中にないと思ってたから。嬉しさに涙が溢れる私に、いつも冷静な手塚君が珍しく取り乱す。
「えっ…あの……す、すまない。泣かせるつもりはなかったんだ。いきなりキスなんかされて嫌だったよな。すまない」土下座でもしそうな勢いの手塚君に私は涙が引っ込み思わず笑ってしまった。
「この涙は嬉し涙だよ。手塚君がそんなに取り乱す所を初めてみたよ。手塚君が好きだからチョコを手作りしたんだよ。嫌なわけないじゃない」私は涙を指で拭いながら手塚君を見つめる。
「俺だっていつも冷静なわけじゃない。大切なものの事になると冷静でいられなくなる」手塚君の言葉を聞いて私は関東大会の跡部さんとの試合や全国大会の真田さんとの試合を思い出した。
「そうだったね。大切なものの為に自分を犠牲にしてまで頑張っちゃうのが手塚君だったね」私は手塚君の肩や肘にそっと触れた。
「もう自分を犠牲になんかしないでね。見てるの辛いから。これからは私に半分背負わせて。大好きな手塚君の為に一生懸命頑張るから」私の言葉に手塚君は優しい顔で頷き、私達は2度目のキスをした。