第5章 バレンタイン小説(跡部・跡部目線)
2月14日早朝
『今年はどのくらいのチョコを貰うんだろうな。何台かトラックを手配したが足りるだろうか…』
本命だろが、義理だろうが人から貰ったものは乱雑には扱えないからチョコを貰う数には毎年頭を悩ませる。
チョコを貰うたびに送り主をノートに控える。ホワイトデーには全員にお返しをする為だ。貰いっぱなしなんて失礼だからな。
教室に入るとクラスの女子が一斉に俺にチョコを渡してきた。それをまとめてロッカーに入れて席に着く。教科書入れる前に机の中を覗く。
『今日はどこにチョコがあるかわかんねぇからな』
机の中には可愛くラッピングされた箱が入っていた。送り主を見ると香住長野と書いてあった。俺は香住からのチョコを誰にも見られないように鞄に入れた。
昼休み、俺は1人になりたくて生徒会室に向かった。この時期、昼休みに生徒会室を使う奴はいない。
俺は鞄から香住から貰ったチョコを取り出した。丁寧にラッピングを外して箱を開けると、青、ピンク、白の薔薇の形のチョコが入っていて生徒会室に薔薇とチョコの香りが広がった。
『薔薇のチョコか。俺様にピッタリじゃねぇの』
食べてみると青、ピンク、白それぞれに味が違った。
ブルーベリー、ストロベリー、ホワイトチョコだな。
『なかなかやるじゃねぇの。さすが俺様が認めた女だ』
チョコをゆっくり堪能しているうちに昼休みが終わった。
『礼は放課後か…』
放課後になり俺は校内放送をした。
「生徒会会計、香住長野。至急生徒会室に来い!繰り返す。生徒会会計、香住長野。至急生徒会室に来い!」俺は少し怒っている声でアナウンスした。こうしておけば生徒会室に来るのは呼び出された香住だけだ。香住にはわるいが、今日の俺はどこで声を掛けられるかわからないから人払いの為には俺が怒っていると思わせておく必要がある。