第5章 バレンタイン小説(跡部・跡部目線)
「流石にこの量はキツイな。期日に間に合うかな…」俺が生徒会室に着くと香住の声が聞こえてきた。
「弱音なんて、らしくねぇじゃねーの」香住を励ます声をかけながら
生徒会室のドアを開けた。
「跡部君…どうしてここに…部活はどうしたの?」香住が驚いた顔で俺を見た。
「部活はとっくにおわったよ。外を見てみな、もう真っ暗だぜ」俺は窓を指さす。
「えっ!嘘っ!」香住は窓の外を見て驚いている。
『時間もわからねぇほど集中してたのかよ…』
「毎日、毎日こんな時間まで1人で残るなら誰かに手伝ってもらえばいいだろ?苦手なんだろ?数学」俺は香住が心配になった。
「跡部君は何でもお見通しなんだね。テニス以外でもインサイト使えるんだ。これは私の仕事だから。人より時間かかっちゃうのは自分の責任だし。期日に間に合わなかったら跡部君に迷惑をかけちゃうから頑張って仕上げるね」香住はそう言うと再び資料に目をやり、電卓を叩こうとしたから資料を取り上げた。香住にこれ以上無理をさせたくなかった。
「文化祭を企画運営したのは生徒会だ。だから香住だけの仕事じゃねぇ!間に合わねぇなら何で俺を頼って来ねぇんだよ。1人で何でも抱え込むなよ。今日はもう遅いから帰るぞ!」俺は香住を無理矢理生徒会室から追い出した。
『俺が認めた奴は何でこうも1人で抱え込んで無理するんだろうな…』
もう辺りは真っ暗だったから、こんな時間に女子中学生を1人で帰宅させるわけにもいかず、俺を迎えに来ていた車で香住を家まで送って行った。
次の日から俺は部活の合間を縫って生徒会室に行き、収支報告書作成を手伝った。その甲斐あって無事に期日内に報告書を提出することができた。