第5章 バレンタイン小説(跡部・跡部目線)
今日は氷帝学園中等部の入学式。初等部で児童会長だった俺は入学式で新入生代表の挨拶をした。
入部する部活は決めていたので入学初日にテニス部に入部した。
俺が練習するのを見学に来ている女子が日に日に増えていく。野郎ばかりのテニスコートに響く黄色い歓声が心地いい。
3年生が引退するときに部長に任命された。
その頃になると俺目当てのギャラリーがテニスコートに群がるくらいの数になっていた。
何でも1番じゃないと気がすまない俺は生徒会長にも立候補し、当然のことながら当選した。
生徒会メンバーの顔合わせの時、俺は驚いた。
入学してからずっと俺のテニスを見に来ていた奴がいたからだ。
彼女はかなり早い段階から俺のテニスを見に来ていた。他のやつらみたいに騒いだりすることもなく静かに見ていたから
妙に気になってしまい、いつしか彼女が来ているかを確認するようになっていた。
『香住って言うのか、初めて名前を知ったぜ』
香住は生徒会に入ってから、俺のテニスを見に来ない日がある。テニスを見に来れなくなるほど沢山の仕事を与えたつもりはない。
俺は香住が心配になり樺地に香住の様子を調べてもらった。
樺地が調べた情報によると香住は
行事がある度に資料と電卓をにらめっこしながら朝早くから夜遅くまで、授業中以外は生徒会室にいるらしい。
『会計に立候補した癖に数学が苦手とか笑えねぇよ。そんなんで文化祭後の報告書の作成大丈夫なのかよ…』
文化祭が終わり数日が過ぎた。
まだ香住はテニスを見に来ない。
部活が終わり帰り支度を済ませて、ふと生徒会室の方を見上げるとまだ明かりがついていた。
『まだ残ってやがるのか。仕方ねぇ奴だな』