第1章 バレンタイン小説(手塚・彼女目線)
私の席は手塚君より少し後ろ。私が朝練終わってもう一度教室に来たときには手塚君はまだ来ていなかった。
『手塚君、部長だから朝練あるといつも遅いからなぁ…』
そわそわしながら待っていると、教室のドアが開き手塚君が入ってきた。私の席からは手塚君がチョコ鞄に入れたかも手塚君の表情もわからない。でも態度はいつもと変わらない様子で私は胸がチクリと痛む。
放課後、いつもなら部活が終わると直ぐに帰るのだけど今日はそんな気分になれない。まだ残っているはずの手塚君の姿を探すように男子テニス部の方へ向かうと後ろから声を掛けられた。
「女子テニス部の子だよね?男子テニス部に何か用事かな?」声をかけて来たのは大石君だった。とっさに上手い言葉が思い浮かばす「手塚君と同じクラスで学級委員やってるんだけど、聞きたいことがあって…」逃げ出したくなる気持ちを必死で抑えて、なんとかそれなりの言い訳を絞り出した。
『聞きたいことがあるのは本当だからいいよね』
「そりゃ大変。校内ランキング戦の対戦表を考えてたから手塚はまだ部室だよ」大石君はそう言って部室のある方を指さした。私は大石君に頭を下げて部室に向かった。
緊張しながら部室のドアをノックする。「はい。どなたに用事でしょうか?今は部長の私しかいませんが」そう言いながら手塚くんは部室のドアを開ける。
「香住かどうした?とりあえず中に入れ」手塚君は部室に招き入れてくれた。「男子テニス部にくるなんて珍しいな。何か用事か?」何て答えて良いのかわからず黙ってしまう。
『バレンタイン受け取ったかを聞きに来たなんて言えないよ…返事を催促してるみたいじゃない…』