第4章 バレンタイン小説(手塚・手塚目線)
「テニス、毎日遅くまで頑張っているようだな。帰りによく姿を見かける。学級委員の仕事もちゃんとやってくれて頼りにしている。1年のクラブ見学の時、見に来てただろ?あの時の俺はもうテニス部に入るつもりで体験入部してた。実はあの時俺は左利きなのに、右手で試合をしていた。対戦した先輩の実力を考えて右手で試合をしたのに、香住に強いんだねって言われて複雑な気持ちになった。俺は全力で戦ってないのに、そんな試合を褒められて居心地が悪くて、まともな返事が出来なくてすまなかった。それが気になって気がついたら香住を目で追うようになっていた。ようやく謝ることが出来た。そしてこれはチョコのお礼だ…」俺はやっと気がついた。彼女をずっと見ていた気持ちが恋だったのだと。自分の気持ちに気がついたら急に彼女がいとおしくなり、彼女に触れたくてたまらなくなり吸い込まれるように彼女の唇にキスをして強く抱き締めた。
「今、ようやく気がついた。香住をずっと見ていた気持ちは恋だったのだと。俺と付き合ってくれないだろうか?」彼女を離し、彼女の目を見つめて軽く深呼吸して気持ちを落ち着かせてから、俺の気持ちを伝えた。
俺の言葉を聞いた彼女は泣き出してしまった。彼女の涙を見た俺は頭が真っ白になり、どうしたらいいかわからず取り乱した。
「えっ…あの……す、すまない。泣かせるつもりはなかったんだ。いきなりキスなんかされて嫌だったよな。すまない」彼女の気持ちを無視した自分の行動を反省し、心から後悔した。謝っても謝り足りない事をしてしまった。
俺が必死に謝っているのに彼女は笑いだした。
「この涙は嬉し涙だよ。手塚君がそんなに取り乱す所を初めてみたよ。手塚君が好きだからチョコを手作りしたんだよ。嫌なわけないじゃない」彼女は涙を指で拭いながら俺を見つめた。
「俺だっていつも冷静なわけじゃない。大切なものの事になると冷静でいられなくなる」俺の言葉を聞いて、彼女は何かを考えているようだった。
「そうだったね。大切なものの為に自分を犠牲にしてまで頑張っちゃうのが手塚君だったね」彼女は俺の肩や肘にそっと触れてきた。
「もう自分を犠牲になんかしないでね。見てるの辛いから。これからは私に半分背負わせて。大好きな手塚君の為に一生懸命頑張るから」彼女の言葉俺は頷き、俺達は2度目のキスをした。