第4章 バレンタイン小説(手塚・手塚目線)
青春学園中等部に入学した俺はテニス部へ入ることを決めていた。しかし、いきなり入部するのではなく、テニス部の雰囲気が知りたくて、まずは体験入部することにした。
そこで2年生と試合をすることになった。体験入部で目立ってもいけないからと、俺は利き手ではない右手で試合をすることにした。
試合は接戦で2年生が勝利した。
「同じクラスの手塚君だよね?見てたよ。強いんだね。テニス部に入るの?」試合後小柄な女の子に声をかけられた。彼女が言うには同じクラスらしいのだが、俺は彼女の事を知らなかった。
全力を出していない試合を誉められた俺は気まずくて「あぁ」とだけ答えて立ち去った。
次の日、俺は教室で彼女の姿を探し座席を確認し、教室に掲示してある座席表で彼女の名前を調べた。
『香住長野か。少し印象の薄い子だな。あんな子は虐められやすい、昨日声をかけられたのも何かの縁だ。彼女が困っていたら助けてやろう』
それから俺は無意識に彼女の姿を目で追うようになった。
彼女とは2年では別のクラスになったが、3年でまた同じクラスになった。俺と同じ学級委員になった事で彼女との距離が一気に縮まった。
学級委員同士だから彼女と話す機会も増えた。だが彼女は真面目で黙々と作業をしている事が多く、彼女の邪魔をしないように俺も黙々と作業をする。
一緒に学級委員をするうちに俺は彼女を頼りにするようになっていた。