• テキストサイズ

【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


「先生!こちらの頭部外傷の患者さん、意識ありません!瞳孔散大!すぐお願いします!」

「こっちは手が離せない!」

「こっちも無理よ!」


運び出された赤タグ患者の処置を次々に進める医師の声が入っては抜けていく。

「処置に入れる先生!……お願いします!!」

懸命に医師を呼び、バイタルを確認する看護師。
きっと彼女も命を救うために厳しい訓練を受けて、救命のナースになったに違いない。

頭部外傷
瞳孔散大


今すぐ尖頭の処置をして血腫を除かなければ、頭蓋内圧が上がって脳死に陥る危険な状態。


「……医師の……大河内です。私が診ます。バリカンと消毒、尖頭セットとドレーンを用意して、救急隊に30分以内搬送可能な病院を探すよう伝えて。ここで開頭処置して止血したら即搬送に回して」

「あの……」

「脳外の医師です。すぐに用意して」

「はい」

感覚は体が覚えてる。

右側頭部を打撲して出血とアザになってる。
尖頭するにも血腫の位置が分からなければ出来ないけれど、このケースはほぼ100%受傷場所の血管が切れて血腫を起こしてる。
外傷がある事で処置の場所に迷わなかったことは幸運だった。

看護師の用意してくれたバリカンで最小限の髪を剃り落として消毒。

メスを握ったのは7年振りだった。


何千何万と訓練し、何百件もの実績を積み上げた。
脳外の処置としては複雑では無いものの、CTをせずに尖頭するのは何度やっても恐怖は消えない。
少しでも間違えたら命を奪う。命は救って当たり前。
私たち医師は命を救うだけでは半人前。命とその後の人生全てを救って初めて1人前となる。


私のブランクはこの患者には関係ない。


切開と同時に出血し、内出血していた血液が溢れ出す。
鮮血をガーゼで押さえて、剥離子で骨膜を剥離すると見えた白い頭蓋骨

「頭をしっかり固定して」

「はい」

尖頭ドリルの先端を垂直にあてて、ゆっくりとドリルを回した。

深くドリルし過ぎれば脳を損傷する。

硬膜に達する感覚を感じてドリルを止めて確認すると、見えたのは間違いなく硬膜。
硬膜を切開し、ドレーンを挿入して血腫を除去した。

止血の間、看護師が患者の容態を確認してくれている。


「動向反射正常です。バイタル安定。」

「搬送して。止血剤入ってます。病院着いたらCTして問題なければ閉じて」
/ 139ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp