第13章 Re:Start【緑間真太郎】
まさか……
つばきがいる。
そして、スーツのまま患者の処置に入っている。
見間違えるわけが無い。
何より愛して大切にしてた相手が、どんなに探しても見つからなかった彼女が、砂埃にまみれて救命活動にあたっている。
こういった現場では医師と看護師が分かりやすいように、それぞれのジャンパーを着ることになっているがつばきは着ていない。
ワイシャツの背中に黒マジックで大きくdoctorと手書きされていた。
建物内での処置は崩落のリスクがあると判断されて、1度外に出されて目に入ったのは、あの頃と何も変わらない、人を救うために必死になるつばきだった。
「おい……真ちゃん……あれ……」
「分かってる。だが今は救命活動が優先だ。」
「いいのかよ!ずっと探してたんだろ?!今捕まえなきゃ、またいなくなっちまうぞ!」
「俺たちは医者だ。何があろうとも命を最優先する。医師としての仕事を放棄してどんな顔でつばきに会える。俺たちはどんな時も医師であろうと約束したんだ」
本音を言えば今すぐつばきに駆け寄りたい。
まだ愛していると伝えたい。
戻ってきて欲しいと伝えたい。
だが、必死で命を救うつばきは、俺にもそうあって欲しいと間違いなく思っている。
「なら、俺のホークアイの出番だな。真ちゃん」
「行くぞ。高尾」
また居なくなってしまうかもしれない。
だが、俺はつばきとの約束を守る。
どんな時も医師でいる。
それが人事を尽くして天命を待つということだ。
簡単に揺らぐ信念では運命に選ばれるはずもない。
だがつばきのことは運命だけに任せはしない。
俺は運命をねじまげてでも自らの手によってつばきを取り戻す。
「お願いします!」
崩落のリスクがある現場からハイパーレスキューが1人、また1人と患者を運び出す。
自力で歩ける者、そうでない者、意識がない者もいる。