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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


そして、その先頭にいるのは…







火神大我


彼はかつての婚約者の友人だった。

医師だったころ、都内で起きた橋の崩落現場に派遣された時彼と知り合った。

その現場には真太郎も派遣されていて、現場がおおよその終息に至った時、真太郎が彼に私を紹介してくれた。

婚約中だと真太郎が伝えると、彼は驚いた顔をした後にニカッと白い歯を見せて、砂ぼこりで汚れた顔をふいて、ヘルメットを外して挨拶をしてくれた。

そして、おめでとう。とも言ってくれた。


先頭にいるということは、彼はきっと隊長になったということなんだろう。



避難する人たちを誘導しながら、その人たちとは逆方向に進むオレンジの制服は、自分が医師だったころを鮮明に思い出させた。



私は、人を救いたかった。
だから、医師という職業を選んだ。


救命に入ったのも、たくさんの事を学んでより多くの命を救いたいと思ったから。

命は、何よりも大切だと信じていたから


だから私は…



その患者が、犯罪者だと分かっても



命を救うことを躊躇しなかった。




大雨の降る夜に搬送されてきた40代の男性患者。
一緒に救急車に乗ってきたのはずぶ濡れの警察官だった。


階段からの転落による頭部外傷と腹腔内出血の疑いで、意識が混濁していて、血圧も低く状態はいいとは言えなかった

事前に聞いていた状況では、警察官に追われていて歩道橋で足を滑らせて転落。
勢いよく転倒したことで側頭部を欄干に打ち付けて、受け身を取れずに転落したとの事だった。


診断の結果、硬膜外血腫と腎臓損傷。
2か月の入院を余儀なくされた彼は、意識を取り戻したときに執刀医であるあたしにこんな言葉を言った。

「命を救っていい気分だろうが、必ずあんたを後悔させてやる」


彼は被疑者として取り調べが必要なため、容体が安定したら警察の管理下にある病院に転院することになっていたけれど、その前日に病院を脱走した。


そしてその2週間後

私が彼の被害者になった








「大河内、加害者を助けたことを後悔しているか」

「……わかりません」


脳外科の直属の上司に聞かれた時、私は後悔していないと答えることがどうしてもできなかった。


医師として揺らいではならない部分が揺らいだ。

もう、医師は続けられなかった。
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