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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


課長補佐を見送って自席に戻ると、最近新設工事をしている自社社員専用の保育棟から、建設工具の音が聞こえ始めた。

少子化問題を社内からでも改善しようというのがうちの社の方針

待機児童になってしまって職場復帰ができない。
時短勤務で育休手当と変わらない給料になってしまうなら復帰したくない。
保育園の突然のお迎え要請の際、仕事を頼むのが申し訳なくて胃がキリキリする。
子供の体調不良で連日休んでしまのが申し訳なくてやめたくなる。
未満児保育が高すぎて復帰した意味があるのか分からなくなる

これはすべて、子供を持つ社員たちから会社に寄せられた意見。
もちろん匿名だから具体的な人物を特定することはないけれど、意見の9割はこのうちのどれかに当てはまった。


本来は両親で協力して対応することでも、今の日本の現状は母親に多くの負荷がかかっていて、とにかくそれを解消するということで少子化対策をする企業のモデルケースとなろうとしている。

現在の女性役員を筆頭に立ち上げられたプロジェクトで社を上げての一大プロジェクト
多分、社会にアピ―ルしていい企業だってことを印象付けたい狙いもあるけれど、育児と仕事で板挟みになる母たちにとっては目下の問題が解消されるなら目的など何でもいいといったとこだろう。

現在拡張工事をしている保育棟に作られるのは、病児保育エリア。保育棟とは入り口から分かれている別棟になる。

医師1名、看護師5名、保育士5名、用務員2名が常時配置されるこのエリアは、来年新年度からのスタートを予定している。


「おはようございます」

そして、いまオフィスに入ってきたのが、一人目育児に奮闘中で先日職場復帰をした2歳の男の子をもつ内田さん。

「おはよう。子供大丈夫だった?」

「…多分」

「今朝も大泣き?」

「はい。この世の終わりくらい泣いてましたけど、いちかちゃんって女の子が一緒に教室入ってくれて、何とかなりました」

窓から見える我が子のいる保育園に目を向けて、ほっとしたような、ちょっと心配そうな表情だけど口元が笑った。


自分に子供がいない私は、育児をする母親の大変さを理解することはできないけれど、とにかく働きやすく、休みやすく、復帰して正解だったと思える職場にしたいと思っている。
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