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【黒子のバスケ】短編集

第12章 分からない男【赤司征十郎】


「父さん」

「なんだ」

「結婚します。今度相手の女性を連れてきますので時間を作ってください」


結婚の許可は求めなかった。
結婚をする報告と、相手には会ってほしいという気持ちを率直に伝えた。

















「場所を設けよう」

賛成とも反対とも言わず、それだけを答えた征臣は食事の7割を残し、ダイニングから出て行った。



この時征臣はすでに癌に侵されていた。

征十郎には直接話すことはしていないものの、自宅での執務が増え、痩せていく体を隠すことはできない。

間もなく赤司グループの全権は征十郎が握ることになるだろうということは誰もが分かっていた。

莫大な資産と権力、赤司グループの実権をすべて征十郎が握る。だれも彼の意見に逆らうことなどできない。

それでも征十郎はその時を待つことはなかった。
それは自分の妻になる人間に対し、父という障壁がなくなったから結婚ができたなどとバカな考えを持つ人間を作りたくなかったことに他ならない。

だからこそ、征臣がまだ全権を持っているうちに結婚を進めた。

















































設けられたその場で、征臣から結婚を承諾された。


式は征臣が自力で動けるうちにと、入籍前に赤司邸で行われた。
場所や日程は赤司の妻の提案だった
赤司家の御曹司の結婚ともなれば、それはそれは大勢のゲストが招かれたと想像するだろうが、日程や場所に配慮してくれた妻に、窮屈な思いをさせたくなかった征十郎は親しい人だけを呼んだ。

そして自身の結婚は式と入籍が済んだ後に、封書で各所に通達をした。



婚約から挙式、入籍とすべてが異例ずくしだったにも関わらず、征臣は一度も意見しなかった。





そして挙式から半年、征臣は全権を征十郎に渡し、財界から一切身を引いた。
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