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【黒子のバスケ】短編集

第12章 分からない男【赤司征十郎】


征臣の部屋から出た征十郎は、手渡された書類に視線を落とす。

社名すら書かれていないそれは、どこのものか自分で特定する所からがスタートだとでも言わんばかりだった。


赤司グループは日本が誇る最大規模の旧財閥系のグループ会社。
国内外に子会社が約700社、関連企業は200を数え、従業員は連結で750000人を超える超巨大企業だ。

その中から1つの会社を見つけ出すことは、針山で針を探すようなものだった。

立て直せ。ということは計画赤字以外の慢性的な赤字、ないしはこのままいけば近い将来赤字に転落する企業。

だが、これほどのグループになればどの部門でもそういった財務状況の会社は存在する。


売上の規模、利益、経費科目、損益分岐点、取引先の業種等、資料から読み取れる情報である程度の目星を付けながら、グループ会社の決算書類にアクセスした。






「小橋」

「はい」

「君は今日はここまでだ」

「いや、しかし……」

仕事の目処も経っていないのに帰る訳にはいかないと否定する秘書に、征十郎は目を合わせた。


彼は元々グループ内の中規模な会社にいた。
征十郎に舵取りが任されたうちの1社の不動産ディベロッパーの営業職。
素晴らしい営業成績にも関わらず、何故か役職がなかった。

内情を調べると、自分の地位を脅かす存在になるであろう彼に対し、課長からの昇進稟議を3期に渡り部長が却下していたことが判明した。

3ヶ月後の末日で退職届けが出されていたところを征十郎自らが引き止め、秘書に引き上げた。

熱心かつ丁寧な営業スタイル
金銭のやり取りだけに力を入れるのではなく、親身なアフターフォローで顧客からの信頼も厚く、担当が小橋であれば話を聞くという顧客が相当数存在した。
完璧なスケジュール管理とタイムマネジメント
最短の勤務時間で最大の利益をもたらし、社内でも高いコミュニケーション能力を発揮し、彼のサポートを嫌がる内勤はいないと言える。


秘書としても間違いなく優秀な人間になると確信があった。

1度は断られたが、征十郎は絶対に君に来て欲しいと伝え、彼を秘書に迎えた。

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