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【黒子のバスケ】短編集

第9章 Fated【青峰大輝】


無職になった俺はつばきの病院に毎日通った。

傷はふさがって感染症の心配はなくなったけど、恐怖からくる精神的な不調で入院が長引いていた。

「お仕事、いいんですか?」

「無職だからな」

「えっ……?それって……あたしのせいですよね?」

「いや。ちげーよ。俺が決めた」

「すみません……でした……」


俺の退職を知ったつばきは申し訳なさそうに謝ったけど、別につばきのせいじゃねぇ。

俺が嫌だっただけだ。
人を助けられない警察官に俺がなりたくなかっただけだ。


「お前のせいじゃねぇよ。それに今は無職を謳歌してっけど、来月からは知り合いんとこの警備会社で民間のボディーガードだ」

「………青峰さんは、怖くないんですか?」

「怖い瞬間ならいくらでもある。けど、俺は人を守る仕事を続けてぇって思ってる」

警護をしていて怖くない瞬間はなかった。
いつだって緊張感と恐怖の連続だった。

だけど、そういう恐怖と戦ってる人間がいるなら俺らが守ることで少しでも安心してくれたらいいと思ってる。

だから、俺は何も後悔してねぇ


「……助けてくれて…ありがとうございました」

「けがさせちまって悪かった」

俺がもっと速く走れていたら
俺がもっと早く制圧していたら
俺がもっと要領よく距離を詰められていたら
俺がもっと安藤と連携できていたら
つばきはけがをせずに済んだかもしれねぇ。

つばきが自分で必死に腕を振り上げたから命を落とさせなくて済んだ。

逮捕後の供述で、あの男はつばきの頸動脈を狙って殺す気で刃物を振り下ろしたことを認めた。


「あの男は…」

「殺人未遂で送検された。実刑は確実だ」

こんなこと、何の慰めにもならなきゃ何の安心にもならねぇ。
日本の司法は加害者に甘い。
殺人未遂は獄中死でもしない限り必ず出所する。

だからそれまでにはつばきが安心できる環境を整えておきてぇって思った。











毎日欠かさず面会して、つばきが外に出られるようになって、退院が決まったのは事件から半年を過ぎたころだった


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