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【黒子のバスケ】短編集

第9章 Fated【青峰大輝】



彼は将来有望なSPだった。


私を助けたりしなければ、きっと今だって花形の部署で要人警護をしていたはずなのに…

でも彼はそのことについて一度もあたしを責めない

その優しさが苦しい時もあるけど、ただただその優しさに甘えていたい自分もいて、どうしていいのか分からなくなる時がある。


「今日、ちょっと遅くなるわ。なんか女と飯いくんだと」

「うん。分かった。気を付けてね」

「眠かったら寝てろ」

遅くなる日は必ずこう言って、あたしにキスをして家を出る。



あたしもそろそろ準備しなきゃ…

サラリーマン時代とは違って今はフリーランスで仕事をしているから、時間は常にクライアント次第。
時間の遅い仕事はよっぽどの事がない限り受けないことにしてるから、帰宅はどんなに遅くても8時前で、彼より遅いことは少ない。


家を出る時間

仕事用のヒールに足を入れて、玄関の姿見で身なりを確認してから、忘れ物がないか確認してからスマホを開いた。


(今おうち出たよ)


場所を移動するとき、あたしは必ず彼に連絡を入れる。
すぐに既読になるときもあれば、そうじゃない時もあるけど、これをすることであたしは安心して出かけることができる。

何から何まで頼りきりなのに、彼は少しも面倒そうにしたりしない。

ぶっきらぼうなところはあるけど、本当はすごく優しくて頼りがいがあって、どうしてあたしと一緒にいてくれるのか不思議で聞いてみたことがある


「どうしてあたしと一緒にいてくれるの⁇」

「お前が好きだから」

間髪入れずに返ってきた答えは単純明快で、面食らって何も言えなくなったあたしに、「そんな驚くようなことじゃねーだろ」って当たり前のように言ってくれた。



マンションのエントランスまで降りると、出入り口から一番近い駐車場に自分の車が停まっている。

ドアtoドアでないと出かけられない私のために、自分の職場には遠くなってしまうのに、平面駐車場のあるこのマンションに決めてくれた。

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