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【黒子のバスケ】短編集

第1章 EMERGENCY 【青峰大輝】


side つばき

受付の女性が戻って、明らかにあたしの様子がおかしい事に気づいて声を掛けてくれた。

「どうしたの?具合…って何それ?!」

「ばくだん…退避勧告…」

「分かりました!すぐ処理班も呼びます」

爆発物処理班に指示を仰いで直ぐに退避勧告をしてくれて、署内に警報が鳴り響く。

爆弾処理班が避難する人とあたしが接触しないように、流れるように誘導してたくさんの職員が外に出て行って、あたしを見守ってくれていた受付の女性も退避を促された。

「ごめんね。傍にいてあげたいけど…」

「いえ…退避勧告と処理班を呼んで頂いただけで充分です」


防護服に身を包んだ処理班に取り囲まれて横では職員が避難を続けてる。

でも室長の姿がまだ見えない。

確実に署内にいるのに…

見落とした?

ありえない。あれだけの長身とオーラのある人を見落とすなんて絶対有り得ない。
それに大好きな人だもん。通れば絶対わかる。


「電波の干渉でタイマーが誤作動するのを避けるため電源を切らせてもらいますので、スマホの場所を教えてください」

「バッグの中に2台あります」

バッグの中身が床に広げられて、スマホの電源が落とされて画面が暗くなった。

あたしの人生もこのスマホの電源のように呆気なく終わっちゃうのかな…

室長に明日チョコ渡せないのかな。


転がりそうなビー玉を必死に安定させて、自分の人生を思い返していた。

高校は理科オタクだったせいで弄られてたけど、大学はめちゃくちゃ楽しかった。
同じようなオタクがたくさんいて、くだらない実験をしたり文献を読み漁ってオールした。科学の大掛かりな実験の過程でスイスの大学から留学の誘いが来て、あの時はみんなと別れる寂しさ半分期待半分だった。
スイスの大学で、費用を気にせず好きなだけ自分の実験ができるのはこの上なく幸せだった。

帰国して今の研究所に入って、なぜか警察の捜査に協力することになったけど自分が必要とされてるのは嬉しかった
機器の導入でお世話になった商社の人に告白されて生まれて初めて彼氏ができたけど、キスより先に進めない私に嫌気がさして何度も浮気された。それでも別れてはくれなかった
室長に教わった言い回しで5時間の交渉の末、やっとあたしは自由になれた。

そしてあたしは室長が気になってどんどん好きになっていった。
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