第7章 人事を尽くして天命を待つ 【緑間真太郎】
俺の返事を聞いてつばきが風呂に入ってきて一緒に湯船に入った。
本能を抑えることなど容易ではないが…無理はさせられない
それにせっかくできた二人の時間
話をして、つばきがしんどいことを聞いてやる方がいい様な気がした
「いつも育児を任せっぱなしにしてすまないのだよ…」
「もー(笑)何?突然。あたし楽しいよ。あの子真太郎と同じで賢いからいろんなことをすぐ覚えるの」
つばきは息子のいいところはいつも俺に似てると言ってくれる。
「今日なんて“たぬきのしがらきやき”って言ったのよ?もうホント可愛かった!真太郎も聞きたかったでしょ?」
「あぁ。聞きたかったのだよ」
俺がラッキーアイテムで手に入れた大きな狸の信楽焼は息子のお気に入りらしい。
和室に飾ってあるのをよく撫でたり話しかけたりして、なにやらいろんなことをお願いしてるということも教えてくれた
「それでね、あの子短冊に何書いたと思う?」
「読めなかったのだよ……つばきは…読めたか?」
「まさか!全然。でもあの狸に話してるの聞いちゃった」
「なんて言ってたか教えてくれないか?俺が願いを叶えてやりたいのだよ」
「じゃあ、お風呂でよ?」
ここでは教えてくれないのか…
明日までに俺は息子の願いを叶えてやれるだろうか
つばきに言われるまま風呂を出て、一緒にリビングで水分補給をすると、何も書いてない2枚の短冊を出してその一枚におもむろに何か書き始めた
にっこりと笑って笹に付けたそこに書かれていた言葉…
【また赤ちゃんが来てくれますように】
驚いて目を見張る俺に、つばきが照れながら笑みを浮かべて俺と目を合わせてくれた。
「……ダメ…かな?」
「俺は……父親として不足ではないか?家にいる時間も多いとは言えない。子供が増えても仕事を減らせるわけではない。確実につばきへの負担が大きくなる。それでも…」
「ねぇ、何言ってるの?全然不足じゃない。あたし負担なんて思ったことないよ。大変でも負担なんて感じない。あの子だけでも幸せだけど、もう一人いたらきっともっと幸せだと思うの」