第7章 人事を尽くして天命を待つ 【緑間真太郎】
「ほら、今日はパパに何をお話しするの?」
「今日ね、ほーくえんでたばなばした!じぇりたべた!」
つばきに促されて、覚えたての単語で話してくれた保育園でのできごと。
息子の言葉通りリビングには短冊が1枚付いた小ぶりな笹が飾られていた
「ゼリーはおいしかったか?」
「うん!おほしさまはいってた!あとね!おねがいごとかいたよ‼‼」
「お願い事を叶えるなら人事を尽くすのだよ」
「じんじをつくして、てんめいをまちゅ‼」
最後を力強く言い切ってニコニコと笑う我が息子
3歳にしてこの言葉を言うのは間違いなく俺の影響だが、これはつばきのせいでもある
「ほんと…真太郎そっくり(笑)」
「お前が教えるからだろう」
何かの番組で“口癖”というワードが出た時それを何かと聞く息子につばきが教えた俺の口癖
息子は早くから保育園に行き出したこともあるのかこの歳では言葉が発達していて3語や4語の言葉もきちんと話せて大人の言うことをよく聞いていて真似をする
つばきはそれが可愛くて面白いらしくいろんな言葉を息子に教えていて俺が過去に言った言葉を息子に吹き込んでいる
「今日かにざは何位だった?」
「きょうのかにざは1い‼おねがいごと叶う?」
「きっと叶うと思うな。すぐには難しいけど…きっと叶うと思うな」
息子と俺は同じかに座
息子が何を願ったのか知りたくてお願い事を書いてある短冊を手に取ると俺には読むのが難しい字でなにやら書かれていた。
これでは分からない
つばきはお願い事の内容を聞いているのだろうか…?
後でこっそり聞いて俺にかなえてやれることならば、いつも父親らしいことができない俺でも少しは父親として役に立てるだろうか…
いつもつばきと息子には俺の願いをかなえてもらってばかりだ
七夕くらいは俺が二人の願いを叶えたい
「今日はお夕食みんなで食べれるね‼‼」
「うん!ぱぱてあらいうがいだよ」
満面の笑みを浮かべた息子と嬉しそうに笑うつばき
夕食を共にするということだけでこれほど嬉しそうにしてくれる二人をもっと大事にしなければ……
こんなにいい家族を持てたのだから何としても願いはかなえてやらなければ罰が当たる。
俺は今日二人の願いを叶えるべく人事を尽くすのだよ