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【黒子のバスケ】短編集

第7章 人事を尽くして天命を待つ 【緑間真太郎】


実家の病院とはいえ、総合病院での外科医の仕事は決して楽ではない。…が慢性的な外科医不足が叫ばれる中うちの病院はまだマシな方だ。


予定通りに勤務を終えて帰宅すると病院での緊張から一気に解放される気がした



「おかえりなさい」

「ただいまなのだよ」


妻のつばきもうちの病院で働く医師

つばきとは医大で知り合い結婚して7年目


「パパー‼‼‼‼」

「ただいまなのだよ」


3年前に生まれた息子は保育園で色々な言葉を覚え、その日にあったこと、見たこと、感じたことを一生懸命に話してくれた

帰宅が遅い日も多く急な呼び出しや学会などで家を空けることの多い俺にとって息子と話せる時間は貴重だった


俺たちの勤務の都合から未満児で保育園に通い始めた息子は寂しがってはいないだろうかと不安にもなったが保育士と友達に恵まれ楽しい保育園生活を送れている様子をつばきはいつも俺に教えてくれた

息子のことをちゃんと知れているのはいつも俺の分まで一生懸命に息子と接してくれ、話してくれているつばきのおかげだ

そして息子が俺を大好きだと言ってくれるのもつばきのおかげ



「いたいのなおってきた?」

「治してきたのだよ」


つばきはいつも息子に俺のことを“痛い人を助けるかっこいいパパ”だと説明してくれている


本当ならば家族を一番に行動しなくてはいけないのに俺の仕事がそれを許さない


息子が生まれたばかりの頃育児を完全に任せきりにしている自分が本当に父親になってよかったのかと悩んだこともあった


それでもつばきは一度も俺を責めなかった


真太郎と結婚出来て幸せ

真太郎の赤ちゃんを産めて幸せ

この子の成長を毎日見れるあたしが羨ましいでしょ?

この子が大きくなったら真太郎みたいな優しい人になって欲しい



つばきの口から出る言葉はいつだって俺を優しさで包んでくれた

優しいのは俺ではない、つばきだ
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