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【黒子のバスケ】短編集

第6章 フライトプラン【黄瀬涼太】


5月に受けた司法試験はかなり手ごたえがあった
大学の先生にも在学中の合格も射程圏内だって言われてたから必死でやった



サークルにも入らず長期休みでもずっと勉強をしてたのはこっちに戻って彼と一緒にいたかったから


あたしはあたしなりに彼を大切に思ってきたつもりだった
だけどそれは独りよがりだった



彼のアパートに戻ってからスマホを離さずに持ち歩く彼に初めて違和感を感じた。
後ろを通るたびに画面を暗くする彼を見てあの子が言ってたことが本当だったんだって思い知らされた


だから別れを告げた



「聞いたよ。私とは別れたって言ってたくさん女の子と遊んでたんでしょ?」

「……ごめん…寂しかった」


意外にも彼はあっさり認めた

「正社員も嘘でしょ」

「…いつかちゃんとなるつもりだった」


つまり…本当になれば嘘をついてもいいと思ってたんだ


「もう別れて」

「なんで⁉俺たち5年も付き合ってきたじゃん!つばきがこっちに戻ったら俺、結婚とか考えてた!別れるって……なんでだよ‼‼」

「ねぇ…不特定多数と浮気して、正社員でもない人と結婚したい人っていると思う?」



涙は出なかった。

もう呆れて何も言えなかった



彼の家にあるものはすべて処分をしてもらっていいことを伝えて実家に戻るとお姉ちゃんと妹がお母さんと一緒にDVDの鑑賞会をしてた


「つばき⁉太田君のとこって……」

「別れた」

「やっぱね…つばきが司法試験合格するまでは黙ってるつもりだったけど、ま、一緒に映画見よ」

お姉ちゃんは知ってったんだ……
1個しか違わないし地元で有名なら知ってるか…

「えー。結婚すると思ってたのにー。でもつばきねぇが決めたことならしょうがないねー」

5歳下の妹は現役高校生。
若いって最高に羨ましい


「お!つばき。帰ってくるの今日だっけか?」

「別れたから今日に早まったの」


高校の時からの付き合いだったからお互いの両親にも何度か会ってた。

だからお父さんもびっくりしてたけど細かいことは聞かずにいてくれた




あたしはその年在学中に司法試験を突破して大学を首席で卒業した

別れてショックじゃなかったわけじゃない
でも心のどこかで男なんてやっぱりそんなもんなんだって諦めもあった

おかげで勉強ははかどった
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