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【黒子のバスケ】短編集

第14章 Pledge【青峰大輝】


青峰刑事は捜査で来てて、1人だと怪しまれるから私を誘ったってことは分かってる。

不謹慎だと思われるかもしれないけど、私はここに来たことを今すごく楽しんでいる。

お風呂は本当に絶景で、ゆっくり入ればいいって言葉に甘えたから指先がまだふやけてる。
こんなにゆっくりお風呂なんていつぶりか分からない。
弟と一緒に住んでるから、お風呂はラボで済ませて行くことが多い。

解剖医は本当に人数が少ない。多分現役は全国で300人程度
東京だけじゃなく、神奈川、埼玉、栃木、山梨からもご遺体が運ばれてくる。

毎日何人もの体にメスを入れるけれど、ご遺体には例外なく独特の臭気がある。
弟は気にしないと言ってくれるけど、極力シャワーを済ませてから帰宅するようにしてる。

そして、たまに自宅で入る時でも、犬に早く出てこいとお風呂の前で待ち伏せされてゆっくりなんてしてられない。

お部屋だって物凄くいい景色だけど、お風呂では沈んでいく夕日が海に反射して、本当に心が開放されるような光景だった。
この景色が見れたのも、突拍子も無い誘いをしてくれた青峰刑事のおかげ。


部屋に戻ると、本当にさっきまで仕事をしてたんだと思う。
センターテーブルには捜査資料と検案書、閉じられたノートパソコンからは電源を落とした直後特有のモーター音が聞こえた。

この光景がなかったら捜査で来てるってことを忘れそうになる。






「お茶、どれがいいですか?」

「せんせーは?」

氷を取りに行ってから部屋に戻って、いくつも用意されたフリードリンクから一緒にお茶を選んだ。

「苦手なものありますか?わたしはお茶はなんでも好きだから、青峰さんが選んでください」

青峰さんと呼ぶのもここに来て初めて。
刑事のことを外で刑事と呼ぶことは避けるほうが無難だからそう呼んだけど、なんだか慣れなくて不思議な感じがする。

でも、もっと変な感じだったのは青峰さんに「妻」と呼ばれた時。

氷を取りに行って戻る時、中居さんと会って、お風呂の感想を聞かれた時に私をそう呼んだ。


元夫は外では私を妻ではなく嫁と呼んでいたから、もしかしたら初めてそう呼ばれたのかもしれない。

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