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【黒子のバスケ】短編集

第14章 Pledge【青峰大輝】


木村が四課に移動になって、俺のバディは後輩刑事になった。

検案書は絶対ぇ紛失するわけにいかねぇから自分で取りに行くようになって、それに伴って大河内と話す機会も増えた。

俺が検案書を3回目に取りに行ったとき、苗字が桂田から大河内に戻ってた。

木村が騒いでたのは確か半年前くれぇ

結婚って色々あんだろなってのが率直な感想で、それ以上でもそれ以下でもなかった。



けど、見方が変わったのは3年前だった

とある事件で命を落とした28歳の被害者
所持品には妊娠検査薬があったことから、妊娠の確認を頼んだ結果陽性だった。

戸籍に載ることもない
名前が残ることもない
死亡届も出せない


被害者の人数としてすらカウントすることができねぇ

はずだった。

けど、大河内は、その胎児を胎嚢ごと取り出す処置をして写真に残すことで、裁判員裁判の裁判員たちに被害者は2人だったという事を強く印象づけて、裁判官の判決理由にも被害者は2人だったと明言させるに至った。
そしてその結果、判決は前例よりも重いものにする事が出来た。

調書の被害人数を変えることは出来なくても、裁判の場で被害人数を2人だと認めさせたことは異例とも言える。

胎児の父親は最初、その処置に迷ってた。
妻をこれ以上傷つけたくないっつって決断までに時間がかかった。
けど、遺体を家族の元に戻す時に大河内が胎児を入れた小さい木の箱と、検案前に撮ったエコーを渡すと、無気力になってた目にほんの少しだけ生気が戻って、何も言えねぇ妻子の為に裁判を戦い抜いた。


父親は胎児に名前をつけて、2人の名前で葬儀を出した。
大河内のおかげでちゃんと2人の命を弔うことができた。

大河内がしてくれた事に家族も、俺たち担当刑事も感謝してて、それを伝えると、いつもはあんま喋んねぇし表情もそんなに変えることがねぇのに、その時だけは自分の気持ちを話してくれた。

「私は亡くなった人を甦らせることはできませんが、残された人のことはまだ救えると思っています。私の仕事を不要だと思う人もいますが、私はこの仕事で誰かを救いたいと思っています。旦那さんを説得してくれてありがとうございました」


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