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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


あの事故から半年

あたしは高度周産期医療センターの医師として、ハイリスクの妊婦さんや、これまで検診を一度も受けてない、いわゆる野良妊婦の出産や処置に当たっている。

定時はあってないようなもの
休日もあってないようなもの

それでも何も不満はない。
医師に戻れたことは少しも後悔していない。


「次の方入れてください」






「先生。お久しぶりです」

「お久しぶりです。体調はいかがですか?」


今日は滝本さんの術後半年の子宮の検査の日。
超音波とエコーで診察をして、経過は良好。


3人目が欲しいという滝本さんの意思は今のところ変化していない。

「子宮は問題ありません。ただ、前回の帝王切開は緊急度が高かったため少し大きめに切開しました。細かく縫合していますが、やはり3年は妊娠を避ける方向で考えていただきたいなと思います。」

「はい。」

「それから、事故の時に行ったUAEは妊娠しにくくなる可能性が否定しきれない部分があります。また、妊娠後も癒着胎盤、前置胎盤、出血なども可能性として残ります。どのタイミングで妊娠しても、出産は設備の整った病院で対応することが望ましいと言えます」

「分かりました。もし授かれたら、ここで診てもらえますか?」

「もちろんです」


術後、意識の回復とともに戸田先生から説明を受けてはいたはずだけれど、執刀医である私からも説明をしなくてはいけないと思っていて、今回の検診で伝えさせてもらった。


「ありがとうございます。」


この先、滝本さんがどんな家族計画をしていくのかは分からない。

だけど、そこに医療の力が必要ならば、あたしは全力でサポートをしていきたい。





滝本さんを見送って、次の患者のカルテを表示させると同時、胸ポケットの院内ピッチから着信音が鳴った。

「はい、緑間です」

「急患です。検診未受診の18歳女性。妊娠後期です。出血あり。受け入れ可能ですか?」

「受け入れて。横峯さん、予約の外来誘導お願い。」


診察室についてくれている看護師に、この後の予約の妊婦さんを外来に回してもらえるように頼んですぐに救急搬入の準備に入った。

医師不足は何も解消していなくて、緊急受け入れは日常茶飯事

けれど、これが今の私の日常








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