第13章 Re:Start【緑間真太郎】
(ごめん。急患。おそくなる)
数か月前まで、どれだけ望んでも来ることのなかったつばきからのメッセージ
今日はきちんと届いたが、夫婦としての時間が減る知らせ。
だが俺は何の不満もない。
あの現場で再会し、俺たちは夫婦となった。
寝るためだけに帰宅していた家は、俺たち二人の帰る場所となった。
同棲していた頃と変わらない。
互いに仕事が立て込み過ぎて家が散らかることもある。
出かけるつもりが、起きたら夕方ですらないときもある。
今夜の様に、約束をしていても叶わないことも日常茶飯事。
けれど、俺はつばきと一緒に人生を歩むことができている。
つばきが6年前残した書置きの代わりに、今俺の手元にある1通の便せん。
2度目のプロポーズの後、つばきは俺に手紙をくれた。
離れてた6年間、ずっと俺を思い続けていてくれたこと
逃げ出したことを申し訳なく思っていること
懐かしい、温かみのある丁寧な文字で俺への思いをつづってくれて、最後はこう締めくくられていた。
真太郎と二人でもう一度一緒に人生を歩みたいです。
何度読んでも、俺はこの言葉が嬉しくてたまらない。
離れた時間は決して短くはなかった
だが、この先は決して離れない
もう何十回と読んだその手紙をまた読んで、キャビネットにしまうと、医院用のPHSが鳴り始めた。
「緑間先生。305の吉田さん急変です!戻れますか⁉」
「すぐ戻る。」
(すまない。急患だ。俺もおそくなる)
一緒に過ごせる時間は多くない
だが、心はいつも一緒にいる。
俺は、つばきとこれからもずっと共に生きていく。
2025.7.7
ʚ♡ʜᴀᴘᴘʏʙɪʀᴛʜᴅᴀʏ♡ɞ