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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


「お昼行こっか。」

滝本さんが今日来てくれることになっていて、内田さんと3人でランチをしようと話していたからお店を選ばせてもらった。

個室のある、赤ちゃん連れOKだけど少し落ち着いた雰囲気の和食屋さん。


「わーーー!すごくおいしそう!本当にごちそうになっていいんですか?」

「もちろん。」

みんなで食べたいものを選んでそれぞれに御膳をオーダーすると、スリングにいた滝本さんの赤ちゃんが目を覚ました。

小さくて、やわらかくて、赤ちゃんの匂いがする。




「可愛い……」

「係長のおかげです」

そうじゃない。
この子と滝本さんが必死に頑張ったからこうやって二人で退院できて、こうして今会うことができた。

「それに…診てくれたのか係長じゃなかったら。子宮は残せなかったかもしれないって戸田先生から聞きました。本当に、ありがとうございました」

滝本さんは会ってから何度も何度もそうお礼を言ってくれた。

あたしは滝本さんが子供をもう一人望んでいることを知っていた。
子宮を全摘した後の生活がどんなものになるのか身をもって知っている。

確かにあの時、現場の救命医療としての最適解は子宮全摘で間違いなかった。
だけど、あたしはそれはできなかった。

病院にいる場合と災害時の現場医療では処置が異なることは仕方がないのかもしれない。
だけど、その仕方ないを患者に背負わせる医師にはなりたくなかった。

「滝本さんが頑張ってくれたから、あたしも頑張れた。ありがとう。」



医師は魔法使いではない
持てる知識も技術もすべて出し切って、それでも救えない命がたくさんある。

だからこそ、諦めてはいけない。
救える命と未来は、どんな手段を使っても救い取る。





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