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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


全ての負傷者の確認が終わり、救命活動が終了したのは夜8時を回ってからだった。

医療チームの解散が告げられて、これを逃せば二度とつばきに会えなくなる気がした。


「あそこだ。行って来いよ。」

解散と同時に散らばる医療従事者の中に、ワイシャツに直接doctorと書かれた華奢な背中が俺に背を向けたまま、距離が開いていく。

とっさに追いかけてその背中を捕まえて、ずっと忘れることのできなかった体温を自分の中に閉じ込めた。


恋人がいたら
夫がいたら

そんなことを考える余裕はなかった。






「もう一度、つばきと一緒に人生を歩みたい」



震える肩と、ぼたりと腕に垂れたその水滴はつばきの涙なのだと理解するのに時間はかからなかった。




7年ぶりの再会でいきなりこんなことを言われて喜ぶ人間などフィクションでしか存在しないことは分かっていた。

まして俺は振られたんだ。

こんなところでつばきを抱きしめて、過去を思い出させるようなことをしていい立場なんかじゃない。


「…すまなかった……」


我に返ってつばきに回していた腕の力を緩めて開放すると、つばきは振り返らないまま言葉を発した。



「あたしはね……もう子供が産めないの……」


俺達は婚約後念のためブライダルチェックを受けた。
互いに問題はなく、授かることができれば二人欲しいと話し、35歳になるまでには第一子を出産したいとつばきも言っていた。

だが、子供は授かりものであることは百も承知。
ブライダルチェックで互いに問題がなくとも、授からない夫婦は数多く存在する。

「あたしには、子供を妊娠することも、出産することも、あなた自身に子供を抱かせてあげることも、もうできないの。子供を望む真太郎を絶望させたくない」




まさか、つばきが俺の前から姿を消したのは、それが理由だったのか…?


事件に巻き込まれ重傷を負ったつばきは意識が戻るまでは面会謝絶、戻った後も容体の詳細を俺に言わなかった。

担当医のつばきの上司、兵藤部長に何とか教えてほしいと頼み込んだが、守秘義務は破られることはなかった

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