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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


「こんにちはー。お疲れ様です」

「戻りました」

少し前に内田さんが席を立って、彼女と一緒に来たのは滝本さん。

二人の声に出入口を見ると、斜めにかけるスリングが見えてあの時の赤ちゃんが無事に退院できたことが分かって、口元が自然と緩んだ。


「大河内係長……」

私の近くに真っ先に来てくれた滝本さんは、私を呼んだと思ったら口元を覆って泣き出してしまった。

「滝本さん。座って。とりあえず座って?」


椅子を差し出すと、前のスリングに気を使いながらゆっくりと腰を下ろして顔を上げてくれた。

「お礼が……遅くなって……」

「いいのよ。いいの。そんなのいいの。大変だったね。本当によく頑張ったよ」


私が医師だったということは爆発の翌週に部長から課の全員に告げられて、部長は私が滝本さんを救ったんだなんて大げさなことを言っていた。


爆発の原因は、かつて取引を断られたことを逆恨みする業者が知人の花火師の作業場から火薬を盗み出し、工事の振動と火花で引火するように作られた爆薬が原因だった。


あの事故での死者は3名
全て工事関係者だった。


あの規模の爆発でそれならば幸いだという世間の声はあるけれど、身内が亡くなった人からしたら、幸いでも何でもない。


「今日、子供と検診に行って、外出の許可が出たので、お花を供えたかったのと、係長にお礼がしたくて来させてもらいました。」

「無事に退院できて本当によかった。出産おめでとう。」

「ありがとうございます。係長とうっちーがいなければ、あたしもこの子もきっと助からなかった」

事故の時、内田さんは保育棟にいて、滝本さんは上の子を検診のために預けるところだった。

うちの保育園は育休中でも常時預りも一時預かりもどちらも使える。

たまたま来たことで事故に巻き込まれ、たまたまいた内田さんと一緒に真っ暗な砂ぼこりの中をずっと歩いて出口を探してたらしかった。

レスキューが救出に入ったところからは完全に道がふさがれてしまっていて、助けに入った火神さんも結局正規ルートで戻れず、内田さんたちと同じところから出ざるを得なかったと言っていた。


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