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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


脱出した臓器に嵌頓、絞扼、臓器損傷は認められなかったことは不幸中の幸いだっだ。
発見が遅れいずれかの所見があればここでの手術は困難だった。


「還納終了、横隔膜損傷部の修復に入ります。1-0バイクリル」

「1-0バイクリルです」

「6針結節縫合で修復します。バイタルは?」

「108-68、心拍66。サイナスです」


還納終了してバイタル正常。
約7センチ裂けていた横隔膜を縫合し、閉腹を終えた。

「血圧110-68 心拍数67 体温37.0で正常です。」

「搬送お願いします!」


看護師からバイタルを告げられて、あとは病院で見てもらうことができると判断して搬送のためにレスキューを呼んだ。

「横隔膜破裂とそれに伴う多臓器脱出で還納と横隔膜の修復術をしています。PICUのある病院へ搬送してください。術後の再脱出と感染症に注意してもらうよう伝えてください。両親への連絡は中谷メディカルの人事へ問い合わせてください。うちの社のご家族です」

「了解しました」

本当なら私が人事へ行っていちかちゃんのご両親に連絡をつけたいところだけど、今は医師が一人でも多くいなければならない状況で、それはしてあげられない。

とにかく一刻も早く連絡を付けられることを祈りながら、次に運び込まれた患者とそれに付き添う医師に一瞬目を奪われた。


忘れたかった。
だけど大切にされた記憶程強く残っていて、忘れられた瞬間なんて一瞬だってなかった。


「協力をお願いします。緊急カイザーです。手の空いてる医師はこちらへお願いします!母体不安定の為医師の協力をお願いします」

相変わらずよく通る冷静な声
患者と命に真摯に向き合う真剣な顔

どんな時でも医師であろうと誓い合った彼は、あの時と変わらずに命と向き合い続けていた。


「私が」

「つばき、患者は…」

「滝本さん。…部下だから分かってる。所見は?」

「血圧コントロールがよくなくアルドメット錠250mgを処方されている。臍帯脱出してるためカイザーで子供を取り出す」

「分かった。母体は私が。NICU空きは?」

「高度周産期医療センターの戸田に連絡をつけるようレスキューに指示した。」



再会は6年ぶりで一緒に医療行為をするのは初めてなのに、あたしには何の不安も心配もなかった。

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