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【黒子のバスケ】短編集

第13章 Re:Start【緑間真太郎】


エコーを任せて急変患者を診ると、緊張性気胸による呼吸困難を起こしてる。
胸腔穿刺をしながら、エコーをする凛ちゃんの言葉を待った。

「えっと……なんか……白いとこが……」

「ゆっくりでいい。はっきり伝えて」

「はい。……腹腔全体が明部と暗部に分かれています。胃の位置が通常より上に上がっていて……肺との境が見えません。肝臓は……」

「見る場所が違う。もっと左下。恐らく横隔膜破裂してる。縦隔内にガス溜りは?」

「……あ、あります!」


このまま放って置けば内蔵全体が脱出して肺を圧迫。
即呼吸困難になる。

「開腹します。用意して。それから、異変によく気づいた。あとは任せて」


胸腔ドレナージを終えて、再度容態の安定した患者を搬送待機に回し、すぐにいちかちゃんの処置に入った。




病院にいれば助手もついて行うのが当たり前の処置でもここではそうはいかない。

1名の救命専門のナースと私の2人。

だけど今は凛ちゃんがいて、器械の名前は絶対に分かってる。

「凛ちゃんは器械出し手伝って。分からなければ分からないと言っていいから」

「っ……はいっ…」

きっと怖くてたまらないと思う。
それでも逃げずに患者と向き合って命と向き合って、必死で役に立とうとしてくれてる彼女を見ると、ここで私が失敗して彼女にトラウマを植え付ける訳にはいかない。

運び込んだ仮設の医療テントには空調なんてもちろん無い。
あるのは日差しを遮れるビニール素材の屋根と風を遮るためのビニールシートのみ。

患者と医療従事者でごった返したその中は、蒸し風呂と言って差し支えない暑さだった。

とめどなく溢れる汗を気の利く看護師が合間を縫ってひっきりなしに抑えてくれるおかげで何とかやれている。

開腹して溢れ出す血液の吸引を看護師に入ってもらい、損傷箇所を確認すると、動脈からも出血がある。

「ペアン」

「ペアンです」

「止血クリップ」

「止血クリップです」

理央ちゃんはマニュアルに沿って、渡す時にしっかりと器具の名前を言って、血液で滑りやすい物もしっかりと手渡してくれた。

「避けた横隔膜を縫合して、脱出した臓器を戻します。血管が細いのでゆっくり行きます。バイタルから目を離さないで、変化があったら教えて」

「はい。」

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