第13章 Re:Start【緑間真太郎】
1人処置をして搬送にまわし、また1人処置しては、負傷者が運び出される。
終わりは見えない。
建物内から退避させられた医師も加わったことで、赤タグの処置は進んでいくものの、黄から赤、緑から黄とタグが変わることはこういう現場では少なくない。
特にお年寄りや子供、心疾患がある人は容態が変化しやすい。
運び出された赤タグの子供たちは既に処置を受けられているけれど、そこかしこで子供の泣き声が響き渡っていた。
「大丈夫だよ。どこか痛い?」
「お姉ちゃんお医者さん?」
「まだお勉強中だけど、もうすぐお医者さんになるの。痛いとこある?」
「……おなか」
「じゃあ先生呼ぶね」
近くでそんな会話が聞こえつつも、今手を話すことができずドクターを呼ぶ声が聞こえてる。
医師を呼ぶと判断したのなら普通の腹痛ではない可能性を医学生が察知してる。
行ってあげたいけれどすぐには行かれない。
「チアノーゼあり!!頻脈です!!ドクターいませんか!!!」
猶予がないことは明白だけど、ここからでは指示を出しても雑音にかき消されてしまう。
「あの子こっちに運んで、あの医学生も連れてきて。腹部エコーするから喋れるうちに急いで」
搬送の為にいたレスキューに指示をすると、バックボードを持って緑タグの所へ行ってくれた。
「バイタル安定です。搬送しますか」
「お願い」
そして、私の手が空くと同時目の前に降ろされたバックボードには5歳くらいの女の子が乗っていて、履いてる靴に【さわだいちか】と名前が書かれてる。
保育園は年齢で分けられていない。
もしかしてこの子……
「いちかちゃん、おなかどこ痛い?」
「ここ……」
寝転がって手を乗せたのは胃のあたり。
「机がお腹に乗って重かったの」
タグは緑、書かれてる受傷部位は前額擦過傷のみ
恐らく見落とし。
エコーを用意して確認しようとすると、さっき搬送待ちに回した患者の容態が急変したのか警告音が聞こえた。
「このエコー使ったよね?胃からエコー当てて腹腔内の様子をあたしに教えて」
「私ですか?!私はまだ医学生です!できません!!」
「できる。落ち着いて、あたしに見えたものを正確に教えて。」
「でもっ……」
「人を助けたいから医者になるんでしょ?なら、今助けなさい。今助けて医者になりなさい」