第1章 夢は夢のまま
ルナをあやしていると、いつのまにか俺も一緒に眠りについて数時間が経っていた。
うっすら目を開けると寝ていた彼女は起きており、ジッとみつめている。
しばらくほっとくと、今度は、顔を触られているのか⁉︎
柔らかい指先で顔を撫でられるとなんだか擽ったい。
それに柔らかい肌とか女性っぽいなぁとか、可愛いとか、彼女の考えている事がダダ漏れだ。
触ることを堪能したのか、ベッドから離れていくルナの腕を捕まえる。
『どこに行く』と聞くと慌てて背を向けられる。
触っていた事をバレたと思い、落ち着かない様子。
なんだか、からかいたくなって顔を触っていた事を言及すると、みるみる真っ赤な顔になって可愛い。
「クロロ、汗かいちゃったからシャワー浴びてくるね」
逃げる兎に追い討ちかけるようグッと体を引き寄せ、耳元で囁いてみる。
「一緒に浴びようか?」
「えっ‼︎無理〜恥ずかしいからだめ」
こっちに振り返りながら、いたずらっ子のように俺の唇に人差し指をあてて笑って見せる。
ああいう顔小悪魔って言うんだろうな。
「ちぇっ、だめか~」
髪をクシャクシャ触りながら寝転がっていると、ニコニコしながらこちらを見てくる。
「いい子にして待っててね」
ガキ扱いかよ、おまけに額にキスをして今度こそ逃げるようにお風呂場に行ってしまう始末。
まったく冗談じゃない。
ルナの行動や言動に翻弄される。
溜息をつきながらも一人ごち。
モヤモヤしているとバイブルにしてあった携帯に目線を移すとシャルからだ。
『おはよう、団長。元気にしてた?』
朝早くからハイテンションな団員に少しイラっときながらも相対する。
「要件はなんだ?」
『なに?機嫌悪い?いや〜もしかしてしてる最中?』
「バカか?なわけないだろ?早く要件を言え』
『横暴だな〜いいの?団長のお姫様が、欲しがっていたアレの情報掴んだのにさ‼︎』
益々イラつかせる口ぶりに堪忍の尾が切れ、今日一番の冷たく低い声で「シャル!」と呼ぶ。
『ごめんごめん、冗談だよ』
「冗談にしては随分タチが悪いと見えるが…」
『あはは…クロロごめん』
「じゃ、聞こうか?本題のあの宝について!」
獲物を掴むための高揚感に広角を上げながら、シャルの言葉を待つ。