第1章 夢は夢のまま
あっと思った瞬間、ルナの体はクルリと反転する。
溜息を漏らしながらも後ろから抱きしめる。
透き通ったアンバー色の髪は、柔らかくてしなやかだ。
そっと髪に口つけをしてもっと抱きしめたくなる。
ルナは、他の女とは違う。
思い通りに行かない事の方が多い。
それもこれも彼女自身が何も解っていないからだ。
イラッとした気持ちを押し殺しながら、彼女をギュッと抱き締める腕が強くすると、彼女が身じろぎ始める。
また、俺の元に返ってくるから、離したくなくてもっと近くに寄せると、またルナの背中をポンポンと優しく叩く。
他の女になんてそんな事したことがなかった。
女なんて自分の性欲処理だったからだ。
ルナに出会ってそれも変わったと思う。
どんなにいい女がいい寄ってきてもルナ以外抱きたいとは思わなくなった。
例え、その場の流れでセックスになったとしてもだんだん気持ちが萎えて出すだけ出したら、その場で殺すことが多くなった。
翻弄される気持ち…。
決して嫌ではない。
彼女の頬に手をかけて優しく触れると、触れた指先から温かい気持ちになれた。
そのまま額に瞼に頬に口付ける。
ルナから『クロロ…』と名前を呼ばれると、それが溜まらなく愛しい。
でも、時折見せる彼女の不安な顔。
あの時も不安を隠してでも俺に向ける笑顔は綺麗だった。
だからなのか、不安を取り除いてやりたい。
もっと甘やかしたい。
優しくしたい。
夢の中で何が起こっているのかは、気になるのは確かだが焦る必要はない。
どんな夢を見ていたのかはまた聞くとして、今は穏やかな優しい夢をみていて欲しかった。
抱き締めた彼女の温かい温もりに俺自身もまた夢の中に連れしていく。
二人の穏やかな寝息が、この部屋を満たしていった。