第1章 夢は夢のまま
カーテンの隙間から朝日の眩しさに眼を擦る。
彼を起こさないように、ベットから降りようとすると、彼の腕が絡まって全く身動きがとれない。
温かい胸の中に身を応じれば、また眠気に襲われる。
ダメと思いながら腕を退かそうとしても、やはり女の力じゃ無理。
寧ろ、どんどん力が入って苦しいぐらい。
念を使えば話は別だが…クロロに対して使いたくないなんて思ってしまう。
身じろいて頑張って、寝返りを打ててもまた、引き寄せられなすすべ無し。
「ホントウニ、ネテイルノ?」
片言で言ってみると、後ろからクツクツと肩を震わせている。
「えッ?何起きてるの?もうークロロひどい」
そのまま勢い余って起き上がると、口角を上げたクロロがいる。
「朝から元気だな。体調は?」
「体調?」
彼が、「そう、体調」とお腹の下あたりを指差すと、眼が自然とそちらに向かう。
向かった先を見れば、何にも言い難い言葉で朝から大絶叫。
ホテルの最上階だからと言っても、かなり響いたと思う。
だって、下着どころか何も着ていない。
咄嗟に体を隠す様丸まりながら屈むが、彼は、横でクスクスと笑っている。
思い返してみると、色々と走馬灯のように先程のお風呂でした行為も言葉も思い出される。
恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「ルナ、体の体調は?痛い所無いか?」
クロロが、温かいシーツの中に体事引っ張り、優しく言いながらも状態をみている。
眼なんて合わせられないから、彼の胸の中に顔を隠した。
「ダッ、ダイジョウデス。ホントウニ、ダジョウブダカラ」
また、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
「何でカタコト?それより顔あげてよ。ルナの顔みたいんだけど?」
「いや無理です。それよりも出来たらこの腕外してもらえると助かります」
逃げるようにシーツの中をもそもそ動いても、蜘蛛の巣にいる蝶は、唯々羽をバタつかせているだけ。
「無理だよ、俺は蜘蛛だから。
簡単に捕まえた蝶を見す見す逃がすことなんてしないさ」
手を絡ませる様に体を引き寄せられる。
「ルナ、蜘蛛の糸の事知っているか?
蜘蛛の糸って、簡単に切る事は出来ないんだ。
だから、俺が飽きて手放すか…それとも…殺すか、まぁ、後者は無いけどな」
その言葉に本気なのか背筋がビクンとなる。