第2章 理由その2
「オールマイトが昨日この近くでヴィランを捕まえたって!」
「ブッ!!」
マイトさんが水を噴き出す。
「どうしたんですか」
「い、いや何でもないよ」
紙ナプキンで口を拭うマイトさんに怪訝な顔をして、私は再度メール画面に視線を落とした。
「えっと…掴まった中学生を助けるために…。ふうん。でもこんな所にオールマイトが現れるなんて珍しいなあ」
「そ、そうかい?」
「そうですよ。だってオールマイトの事務所は東京都港区…」
つらつらとオールマイトの事務所の住所を言う私にマイトさんが苦笑した。
「はオールマイトのフォロワーなの?」
「そうです!」
「へえ」
何が嬉しいのかマイトさんはにこにこと笑っている。
私も嬉しくなり気分も上がった。
「もうずっと大ファンなんです! 彼ってかっこいいし強いしセクシーじゃないですか!? ああもう世の中にこんなかっこいい人がいるなんて信じられない!」
そんなオールマイトに私は名前を覚えて貰った。ヴィランとしてだけど。
「そこまで言って貰えてオールマイトも嬉しいだろうね」
私のテンションにマイトさんがはにかんだ。その笑顔に少しだけどきりとする。
…あれ、この笑顔。誰かに似てる。
「マイトさんはオールマイトのファンじゃないんですか?」
「ンン? ああ私も勿論彼のことは応援しているよ」
「ですよね!」
何かの既視感を感じたが、それが分かる事は無かった。
共に茶をし談笑した。そしてこの後また用事があるというマイトさんを見送る。
「ありがとうございました。今日は楽しかったです」
お茶をしただけだが、彼との会話はとても楽しかった。
「私もだよ」
そうマイトさんが微笑む。それが本当だったら私は嬉しかった。
「…昨日のお礼のつもりだったけど、私が楽しませて貰っちゃいました」
「そうかい? 私も楽しかったよ」
実際マイトさんと話すのは楽しい。次々と出る話題は豊富だし、随分年上に感じるが同年代のような気安さと話しやすさがあった。