第7章 理由after
「元ヴィランの経験を生かして、一癖も二癖もある手強い生徒達を一緒に相手しようじゃないか」
案外楽しいよ!? とぽかんとしたままの私に続けた。
「だから言っただろ。迎えに行くって」
悪戯っぽく片目を瞑るマイトさんに、私は今度こそ目を見開いた。
マイトさんが立ち上がり私の横で腰を落とす。片膝を立て、呆然としている私の手を取った。
「そしてが賠償を終えたら、私と結婚してくれないか」
「!!」
芝居掛かった仕草と、恭しくされたプロポーズの言葉にもう声も出ない。
重ねられたマイトさんの手が熱かった。こんなに痩せているのにオールマイトの熱量を感じ、眩暈がする。
(…マイトさんって、やっぱりオールマイトなんだなあ)
熱いけど乾いた手は傷だらけで、大きかった。
目を瞑り深呼吸して、意を決した私は口を開いた。
「…やだ」
「そ、そっか…」
なにこれ早まった? とマイトさんがおたおたと赤面するがその手をそっと握り返す。そしてマイトさんの青い目を覗き込んだ。
「だって私まだ、マイトさんから付き合ってって言って貰ってない」
「!」
「言って、マイトさん」
「…結婚を前提に、私と付き合ってください。…」
「喜んで!」
私は勢いよく立ち上がり驚いているマイトさんに向かって、思いきりその胸に飛び込んだ。勢い良すぎてマイトさんごと床に転がったけど、マイトさんと一緒に倒れたまま笑う。
ヴィランとヒーローは紙一重だとあなたは言った。
確かにそうなのかもしれない。ヴィランだった私がヒーローを生み出す雄英に勤める事になるなんて世の中は不思議だ。
――ああオールマイト。そしてマイトさん。
あなたが私の事を全部受け入れてくれたから、こうして一緒に笑えた。
私のヴィランな所も嫌いじゃないと言って貰えた事に、どんなに救われたか。
これから先の人生を共に歩けるなんて夢のようだけど、精一杯その恩と愛を返そう。
あなたの為にこの人生を捧げよう。
私は一生オールマイトのフォロワーだ。