第4章 理由その4
仮初めの恋人達の宿の大きなベッドで寝息を立てるに気付かれないように、マイト…、オールマイトはそっと起き上がった。
ほんの少しよろけ、血の混じった咳をしながらシャワールームに入る。
吐血こそしなかったが、久々の情事に張り切ってしまった感はある。
(全く…私ときたら年甲斐も無く若い子と…)
苦笑しながらシャワーの栓を捻った。
オールマイトの個性『ワン・フォー・オール』は受け継がれ成長していく個性だ。その為に必要なDNAの譲渡。
今までは女性と付き合っても、強力すぎる個性がうっかり渡ってしまったらと不安になり最低限の行為以上の事は出来なかった。
だが先日後継者と認めた緑谷少年に、自分のDNAを譲渡する大仕事は既に済ませていた。
だからこそ箍が外れたのかもしれないな、ともう一度苦笑した。
(…)
先程、自分の体の下で組み敷いた細い体躯を思い出す。
初対面でも思ったが、不思議な少女だった。けれど再会する度その存在がオールマイトの中で大きくなっていく自覚もあった。
(ひょっとしたら私は出会えたのだろうか)
――この歳になってようやく、人生を共に歩んでいける女性と。
そんな青臭い未来妄想をしてしまう位、オールマイトは浮き足立っていたのかもしれない。
「おや」
部屋に戻ると空調があまり効いていなかったのか、が肩を出して寝苦しそうに寝返りを打っていた。
「風邪引くよ?」
それとも起こして服を着せた方がいいのかなと悩みながら、オールマイトはの肩にはだけていた薄掛けを掛け直そうとした。
――が、【それ】に気付きオールマイトが固まる。
「これは…」
行為中は気付かなかった、の肩に小さくあるホクロ。
同時に、と同名のヴィランが誇らしげに見せびらかした肩の露出を思い出した。
『もっとよく見てよオールマイト! ほらこの肩のホクロとかセクシーじゃない?』
くるりと回るスカートと、肩の象徴的なホクロ、オールマイトに向かって挑発的に微笑むヴィラン。
「…!!」
オールマイトが目を見開いた。
「…、キミは」
ベッドの上のは、ただ静かに寝息を立てていた。