第3章 理由その3
「――おや?」
「…?」
後ろから聞き覚えのある声がして訝しみながら振り返ると、長身の痩せた影が逆光に見えた。
「、何でここに?」
「…マイトさん?」
シルエットに目を凝らす。現れたのはなんと、いつかのカフェで会った紳士・マイトさんだった。
「何で、って。それは私の台詞ですよ。偶然ですね! マイトさんは何でここに?」
カフェで知り合ってからこのマイトさんとはメールを何度かやり取りする友人になっていた。と言いつつも再び会う機会はなかなか無かったが。
マイトさんが既婚者と聞いた事は無かったけど、ひょっとしたら家族サービスで来たのだろうかと尋ねると「私は独り身だよ」と笑った。
「ちょっと仕事の関係でね。それも無事に終わったから何となく遊園地を眺めているところさ」
マイトさんが肩を竦める。自分勝手ながら私の起こした騒動に巻き込まなくて良かったと安心した。
「は何でここに?」
「…何となく来たくなって」
我ながら苦しい言い訳だったかもしれない。でも私も一人だと伝えるとマイトさんは楽しそうに笑った。
「変わった人だなキミは!」
「よく言われます」
憮然とむくれる私に、失礼したと咳払いをしてからマイトさんは人差し指をくるくると回す。