第3章 理由その3
「こんなもので私から逃げられるとでも!」
「これだけじゃないけど」
私とオールマイトの間に浮かぶ風船が割れた。
「!?」
一つ破裂すると連鎖的に次々割れて爆発が起きた。その中から現れるキラキラとした大量の紙吹雪。それと白い粉。
「これは…」
「気をつけてね、迂闊な事すると粉塵爆発起きるかも」
「!!」
SMASHをしかけたオールマイトが一瞬固まる。自分はともかく、背後に迫るヒーロー達にオールマイトの意識が瞬間的に行ったのを見逃さなかった。
「じゃあね、優しいオールマイト!」
その隙に私は再び高く跳躍した。
「待て!」
愛しい愛しいオールマイトの声を聞きながら、私はまたオールマイトから逃げ切ったのだ。
再び追い掛けて貰う為に。
犯人は犯行現場に帰って来る。そんな現象を言い出したのは警察だっけか。
それはヴィランにも言えるのもしれない。私は昼間ヴィラン騒ぎがあったというのに営業を再開した、商魂逞しい遊園地の夜のパレードを眺めていた。
「…綺麗」
遊園地は好きだ。いくら罪の意識とか常識とかが諸々欠けている自覚のある私でも、遊園地は特別な場所だ。
「…ふふ」
昼間オールマイトと逢瀬(確かにあれは逢瀬だった!)したジェットコースターのレールを遠くから眺めた。イルミネーションで輝くレールは丸い形を彩っていて、昼間の僅かな時間を鮮やかに思い出させた。思わず笑みが漏れる。
「また会いたいなあ」
大好きなオールマイト。