第3章 理由その3
「一人なら我々が偶然再会したお祝いに、一緒に食事でもどうかな」
「…マイトさんはお酒飲めますか?」
「嗜む程度なら」
「私飲みますよ」
「いいよ!」
「じゃあ行きます」
「うん、じゃあ行こっか!」
頷き、私はマイトさんの腕に自分の手を絡めた。
「ん?」
マイトさんは多少焦ったようだけど、女性を食事に誘っているのだからこれくらいはエスコートして欲しい。
「どこ行きますか?」
「…ああ、近くに美味しいワインのあるお店なら知ってるよ」
「じゃあそこで!」
私は機嫌が良かった。それは前回マイトさんと出会う前後のように。
あの時とは違い下衆なチンピラが隣に居ないことも、マイトさんと再会した事も、今日はオールマイトに追って貰えた事も含めて、最高の気分だった。
「ねえマイトさん」
「なんだい」
「…ううん、何でもない。イルミネーション綺麗ね」
「ああ、そうだね」
もしあなたもヴィランだったら今の私の気持ちが分かったかもと言いたかったけれど、その言葉は喉の奥で飲み込んだ。
(オールマイト、またあなたに会いたい)
マイトさんに寄り添いながら、私は心の中で叫んだ。
あなたに会いたい。だから私はヴィランになったのだから。