第3章 理由その3
遊園地に行きたいなーって、そう思ったのが切欠。
「ヴィラン! お前はこの前の廃ビル占拠に続いて遊園地占拠とはどういうつもりだ!」
「うるさいなー」
下から聞こえる拡声器の騒音に私は苦い顔をした。
眼下にはぞろぞろ集まり始めたヒーローや警察、野次馬。指差し見上げられるが、私は気にせず動きを止めたジェットコースターのレールの上で足をぷらぷらさせながらぶつくさ呟く。
「それよりオールマイトまだ?」
割と近所にある某有名遊園地の占拠騒ぎを起こしたのは、当然オールマイトに会うためだ。
ジェットコースターを一発蹴り飛ばし停止させた後、出来るだけ目立つようにレールの一番高い所で周りを見回した。
たん、と足を鳴らすとぐらぐらとレールが揺れる。壊すまではしない。だってさすがに遊園地壊すのは気が引けるしね。
そんな事は勿論知らないヒーロー達はただ私を見上げるだけた。
「駄目だあそこまで届かない」
「レール沿いに行けばいい」
「行ってもいいけど丸見えだ! 迎撃されるだろ」
「ジャンプ力があるヒーローとか、どうにかあいつを捕まえる事の出来るヒーローはいないのか」
大した高さでもないのに喧々囂々と私を捕まえようとざわめく人々に欠伸が出そうだ。
鮮烈(と言ってもいいよね?)なヴィランデビューを飾った私は、何となくだけど有名になった気がする。廃ビルを占拠&崩落させオールマイトから逃げ切ると言う事は、なかなかハードルの高い事だったらしい。
ネットニュースではピンボケ画像で『美少女ヴィラン現る! オールマイトを翻弄!』等と書かれた時は随分腹筋が鍛えられた。…美少女って。ピンボケ画像怖すぎるわ。
「私はあれからオールマイトに会えてないのに…」
オールマイトに会う為だけにヴィランになった私の行動理由は、オールマイト以外に興味を持てないからだ。こんな末端の記事なんて心底どうでもいい。
「…オールマイトに会いたい」
強くてかっこよくて最高のヒーロー・オールマイト!
私は彼にずっと恋している。