第3章 蛇喰夢子という女
「い、今は……、ありません……。数日、待って頂けないでしょうか……」
早乙女さん……、
芽亜里は歯を強く噛み締め、自分が勝負に負けた悔しさと屈辱を感じていた。
「ふふっ……。とても楽しめたので"良し"としましょう。……、それでは皆様ご機嫌よう。明日からこそ、本当に同級の仲間に入れて下さいね?」
夢子は皆にそう言うと去っていった。
私はすぐさま部屋を出て蛇喰さんの後を追いかけた。
私にはどうしても蛇喰さんに聞きたい事があったから。
『蛇喰さんっ……!』
「……?鈴井さん。どうかなさいましたか……?」
『あ、あのっ……!あの……、その……。どうしても聞きたくて……。……、どうやってイカサマを見破ったのか……』
夢子はそんな事か、というように笑ってみせた。
「ふふっ……!簡単な事ですよ、早乙女さんが投票を操っている事はすぐに分かりました。そこで、私はどの手が多く投票されているか知る必要があった……、」
『うん。でも、どうやって……?』
「仮に、早乙女さんと通じている人が"20人"いたとしましょうか。この20人が出す手を共有しないと"イカサマにはなりません"。でも、観察した限り投票される手に規則性は無かった。かといって予め順番を覚えておくというのも大変でしょう?よって、何を出すべきかはその場その場で"毎回決められていた"、と考えられます。では、どうやって……?チップを全部使い果たしてしまうまでずっと観察していましたが、早乙女さんは特に合図のようなものは出していなかった。では、音は……?……、いいえ、それもありませんでした」
蛇喰さんは既にこのイカサマに気づいて、そこまでの観察と考察を巡らせていたのか……。
「と、すると……、残りは"1つしかありません"。早乙女さんの代わりに、教室にいる"誰か"が合図を出している。この考えが正しければ、皆の視線を集める特定の人物がいる筈です。観察を続ける内にふと、気がつきました……。私への視線はギャンブルの当事者ですから、あって当然。その考えが間違いの元でした……。彼らの視線は私ではなく、その実、"私の後ろにいる人物に注がれていたんです"!」