第3章 蛇喰夢子という女
「"出血を覚悟しなければ人は騙せませんよ"」
「へ、変な言いがかりはやめてもらえる?……、勝負を有耶無耶にしようってつもりなら」
「いえいえっ……!そんな勿体無い事するわけないでしょうっ⁈だって ────、
"面白いのはここから"ですもの……ッ!!」
「(何なんだ、コイツの余裕は……!まさか私に勝てる確信でもあるのか?いや、そんな事はあり得ないっ!私が何を出すか分からない以上、勝ちの確信なんてあるわけない!これはただのブラフだっ……!このまま"パー"を出して、私が勝つ……ッ!!)御託はそれだけ……?だったらさっさと出す手を決めてッ!」
「ふふふふふっ……!」
夢子は突然変な笑い声をあげる。
「"ご忠告申し上げましたよ"」
「準備はいい?」
「……、えぇ」
私は固唾を呑む。
これの一手で恐らくこの勝負の勝敗が決まるだろう……。
早乙女さんは今まで通り、最も勝率の高い"パー"を出すと思う。
でも、早乙女さんは負けてしまうかもしれない……。
何故なら……、
「勝負ッ……!!」
蛇喰さんの手の内には……、
「ジャンケン、ぽぉぉおおおんッ……!!!!」
「ぽんっ♡」
"チョキ"があるのだから。
「えっ……、(チョキ……?)」
今まで1度も芽亜里に勝てた人を見た事がなかった周りの生徒達から歓声があがる。
『……!』
「嘘だ……、そんな……っ!」
「嘘も何も現実から目を背けないで下さいね?さて、精算ですが私の負け分を差し引いて、880万円。……、支払いよろしくお願いします♡」
芽亜里は自分が想像もしていなかった現実の有様に唖然としていた。
「(何で、こんな事になった……?ちょっと借金を背負わせればそれで良かったのに……。何で逆に880万も任されている……?何だよ、何なんだよ!コイツは……ッ⁈)」
「"支払って頂けますね?"」
「……ッ!!む、無理……」
「はいぃィ……ッ⁈」
バンッ……!!
芽亜里は勢いよくテーブルに頭をつけて夢子に許しをこう。