第11章 父と娘
天才ハッカーと呼ばれるようになったのはいつからだろう
昔から機械が好きだったこともあり機械科学重視の大手企業に入社。知人の紹介で知り合った女性と結婚して娘を授かった。平凡だがとても充実した人生だった
ただ唯一、自身のハッキング技術を除いては
ジュニアスクールに通っていた頃、初めて作ったプログラミングで汚職疑惑のあった会社の情報を盗んだ。そして汚職情報をネットにばら撒き、その会社は瞬く間に倒産
ほんの少しの好奇心、そう…本当に遊び半分だった
それから少しずつ悪い噂のある会社のデータをハッキングしては暴き、そしてネット上にばら撒いた。流石に警察も怪しく思ったのか調べ出したがハッカーの足取りは掴めない
いつからか裏社会で噂が流れ始めた。まるで得体の知れないハッカー"ファントム"が潜んでいると
大層な名をつけられたものだと思ったが、悪い気もしなかった。むしろティーンを捕まえられない無能な警察たちに呆れた
あぁ、いつまで無能な奴らの代わりに悪を成敗しなければならないのか。そう思いながらも月日は流れていた
そして結婚生活から数年
娘が物心ついた頃、事件は起きた
自室でいつものようにパソコンを開きターゲットを決めている時、トイレに行くために部屋を出た。そして帰ってきたら妻と娘がパソコンの画面を見ていたのだ
どうして、これ貴方の会社じゃないわよね…?
妻は専業主婦だが元はIT企業に勤め優秀だったこともあり、画面を見ただけで何をしているのか分かったのだろう。泣きそうな顔の妻に詰め寄られ全てを話すことにした
妻は初めは驚きで言葉を失っていた
だがブラックな企業を善者のために裁いている、これは私欲でやっていることではない。どうか、どうか理解してくれ。そう話すと手を握り、理解はできないが寄り添えると言ってくれた
理解はできない、だが側に居てくれる……いつも1人だった私には十分な返答だった
更に月日は流れ、娘は大人になった
その頃になると私はハッキングに疲れ、妻と田舎で平凡な暮らしをしていた
娘はというと私の才能と妻の行動力を受け継ぎ、とても賢い女性へと成長した。そしてアメリカではなく日本で働きたいと言い心配する私たちを他所に海を渡った
娘が海を渡り2年の月日が流れた頃、悲劇は起きた