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The one that got away.

第11章 父と娘





突然のことだった、娘が死んだと連絡が来たのは

原因は過労死。娘は日本でも有数の大手企業に才能を買われ海を渡ったのにも関わらずだ。妻は泣きながらあの子は優しい子だから心配かけたくなくて…と言ったが、私はそうは思わなかった。

死に至らしめるほどの何が彼女を駆り立てたのか……それは負けたくないというプライドだろう

何故分かるのかって?

それは娘が私に対抗心を抱き、娘の性格が私と瓜二つだからだ

確かに娘には才能があった、スクールを全て主席で卒業するほどの頭の優秀さ、人望は厚く友人も多い、どこに出しても自慢のできる完璧な娘だった

だがそれでも私の技術には到底及ばなかった

いつからだったから幼い頃は自分で作ったプログラミングを私に見せていたが、時が経つにつれて自室にさえ寄り付かなくなった

あぁ、我が娘よ、何て可哀想なんだ

才能の差を見せつけられ父の居ない場所へと渡り努力をするも報われず、挙句の果てに命まで奪われたというのか



ひと月が経ち私たちの元に亡き娘が戻ってきた。妻と遺品を整理していると1つのUSBメモリーを見つけた。何か嫌な予感がした私は妻に内緒でポケットに忍ばせ、夜になるとパソコンを開きUSBの中身を見た

そしてそこで驚くべきものを見た

ファイルには国を問わずの様々な企業の内部情報がギッシリと引き詰められていた。普通の人が見れば何が何だか分からないだろう。だが元ハッカーの私はすぐに理解した

娘はただの過労死なんかではなかった

娘は胸に期待を抱き踏み入れた新天地で家畜のように扱われ、更には犯罪にまで手を染めさせられていた

娘は…我が愛しの娘が小さな島国で犯罪者にし立てられていた

哀れで可哀想にとはもう思わなかった

どうしようもなく溢れ出てくるのは怒りと後悔、そして頬を伝う涙

USBメモリーを片手にスーツケースに服を詰め妻のいる精神病院へ行き、妻が1人で生きていくために必要な物を預けた

そして自身の戸籍を消し顔も変え、全く別人へと生まれ変わった

もう覚悟は決まっていた


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